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サラリーマンだったからこそ、今がある(3)

~地域コミュニティを育みたい~

●都心での再開発
このまちづくりの仕事を通じて様々な立場の人たちの人生に触れる機会をいただきました。

たとえば、都心での再開発。地権者、商店街、テナント企業、近隣住民など、共通ビジョンのもと、あらゆる立場の人が一つにまとまらねばなりません。

また、土地の有効活用や売ることを検討している地権者の方には深い理由があります。相続税対策もあれば、まとまった資金が必要な事情があったり、地域に貢献したいとの動機をお持ちの方もいました。

しかし、将来の人生設計がしっかり立たなければ決断はできません。さらに、先祖から引き継いできた土地を売るとなると親族の方の理解も重要です。しかし、親族間の人間関係がねじれているケースも少なくなくその絆の修復のお手伝いからの取り組みということもありました。

商店主の方にとっては、売り上げが低迷している、後継者が見つからないといった悩みを打ち明けられて、一緒に知恵を絞りました。

近隣住民にとっては、高層の建築物を建てることになれば日影の影響や自宅が上から覗かれてしまうプライバシーの問題などが心配です。さらに、自治会、町内会など地域の人間関係の調整も一筋縄ではいきません。さらに、権利調整で利害がぶつかりあうことも少なくなく、立場の違う方同士の接点を模索する日々でした。

●ハードからソフトへ
また、住民の方々の生活をじっくり聞かせていただく機会もたくさんありました。親の介護、子育て、教育、福祉、環境、生活に対する様々な課題はその家族だけでは担いきれないものもたくさんありました。

私の中で、地域の人たちが何とか相互に支援し合えないものか、市民として繋がり、問題が起これば相互に支援し合える、そんな地域コミュニティを生みだせないものか、との思いが湧き上がってきました。

住宅やオフィスビルなどの建物を建築して分譲するハードの部分が仕事の柱でしたが、そこに生活する住民の人たちがどうすればもっと豊かに、もっと楽しく地域の方と繋がっていけるのか。直接、人の意識に働きかけること、そして、地域住民の市民性を育み、コミュニティを育むソフトの部分に興味はどんどん移っていきました。

しかし、現実は、仕事の中では、ソフトの部分に費やせる時間もエネルギーも多くを割くことはできず、葛藤の中で悶々とする日々がありました。
 
私は、ハードである建築へのこだわりよりも、ソフトである一人ひとり
のつながりをつくりたかった。地域に生きる人たちに人生を応援したかっ
た。生活上の課題があれば相互支援しあえる地域コミュニティをつくり
たかった。

子育て、教育、介護、雇用、福祉、環境…。
生活に関わるあらゆる問題に正面から向き合いたかった。

葛藤を通じて、自らの思いの輪郭が徐々に鮮明になっていきました。

しかし、民間企業の宿命もありました。ハードとしての建築をつくってそれを分譲して資金を回収し利益を上げることが第一に求められ、人とのつながりやコミュニティづくりに時間とエネルギーを十分に注ぎ込むことはできませんでした。(続く)


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