ツトムさん――
昨日は残念でした。僕は野瀬君と、一日、しゃべってき
ました。夜更けの春の月はいゝ気持でした。野瀨君は、ポ
ーのやうなものをかいてゐます。葛飾草舎の雨はいゝ。あなたと
彼には毎日あひたくて耐りません。あなたにおくった「思ひ出」も
終わりました。あなたは、あんなものはお嫌ひでせう。すみません。しかし、これから、又「卓燈夜話」をかきますから、いろいろ敎へて下さい。
樋渡君の言葉はうれしい。あゝいはれるとうれしい。ご都合のよ
いときにお会ひしまう。十九日には是非中野へ行きませう。
「大鴉」の草稿をおくって下さい。僕は大杉栄全集㐧四巻のため
に、氏の書簡をおくりました。お父母さま、お妹さんによろしく仰有って下さい。
[消印]14.4.13 (大正14年)
[宛先]京橋区銀座尾張町
大勝堂内
品川力 様
牛込区河田町一〇
菊池 与志夫
(日本近代文学館 蔵)
※樋渡氏への私記
※秋 刀 魚 (上)
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