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『(無題)』品川陽子詩抄 (No.53)

(無題)

なが患らひにだんだん
笑ふことの少くなった
貴女にも
時折射す島影のやうな
ほのぼのとした笑の通りすぎる時は
ひどくたのしそうだった

こよひ月は見えないけれど
月のあることを思はせて
ほの明るい空に私は
あの時の貴女の笑ひも
このやうにはるかな幸福につながって

たのしいものであったことを知って
しみじみと
心深くバラの花を持つものゝ
幸福を羨やましいものに思った

                           自筆原稿より



(『品川陽子詩抄』平成25(2013)年10月 
            柏崎ふるさと人物館発行 より)


#品川陽子 #品川約百 #詩


品川 陽子(明治38年(1905)12月6日―平成4年 (1992) 12月12日)
本名は品川 約百よぶ
新潟県柏崎町納屋町に生まれる
詩人
佐藤春夫に師事
兄に、本郷の古書店「ペリカン書房」の品川力、弟は、版画家の品川工


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