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大 杉 栄→菊 池 與志夫 宛書簡
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神と國家の飜譯はありません。
又、僕も今それを飜譯して見ようと云ふ氣もありません。
だけれど、國家論としてはクロポトキンの『國家論』の方がずつといいからです。そして神に就いては、今日の僕等には殆んどもう何んにも云ふ必要がないからです。
尤も今、遠藤無水といふ男が『神と國家』の飜譯をあちこちの出版屋へ持ち歩いてゐるさうですが、よしそれが出ても、僕はあの男のものはちつとも信用しません。
猶バクウニンに就いては、僕は今單行本を書く準備中なんですが、多分來年正月號の『改造』には『マルクスとバクウニン』と云ふ題で、其の一部分の發表が出來ようかと思つてゐます。
おひまの時に、お遊びに御いでなさい。僕は今駒込片町十五の勞働運動社にゐます。吉祥寺前停留場から少し先きの、駒込警察の筋向ひです。
十月十八日(大正十一年)
大 杉 榮
菊 池 與 志 夫 樣
(本郷區駒込片町十五から牛込區河田町へ)
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※ 大杉榮全集
※ サムネイルはミハイル・バクーニン。
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#大杉栄 #バクウニン #クロポトキン #マルクス #大杉栄全集
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