品川 力 氏宛書簡 その五
ツトムさん―お手紙と、アランポオ、の大鴉の訳詩をありが
たく讀みました。あのあとをよみたいと思ひますし、完了した上
は、どこかへ発表されることを望みます。今夜お訪ねしやうと思っ
てゐたのですが、お忙しいやうであるし、又、霙が頬ぺたをうそいたいの
で、卓燈の明かりで本をよむことにしたわけです。ウオズワースのは原稿
紙にかいてありますから、月曜日の晩にでも、お借した本といっしょに持って行って校閲をうけたいと思ひます。野瀨君は四月から、「藝術」といふ
雜誌を出すさうです。
めりめゑ―この人ほど好きな外国作家はありません。
わたしは、めりめゑほどのものをひとつかいたら、その侭死んでも
いゝと思ふほどです。メリメエをめぐんで下さったあなたのご好意
を、ありがたく思ひます。
[消印]14.2.22 (大正14年)
[宛先]京橋区銀座尾張町
大勝堂内
品川 力 様
廿一日 ふじみが丘にて
菊池 与志夫
(日本近代文学館 蔵)
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※[本郷・東大赤門]ペリカン書房と品川力さんと、本郷の町。(第3回)「横丁へやってきたペリカン」
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