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『月下の戀人』品川陽子詩抄 (No.13)
月下の戀人
さゝやかにも
月を吹く風か
ほのぼのと
青草ゆるぎ
かそかなる
君が身じろぎ
よりそひて
あゝわれら
つかのまの喜びに
そこはかとなく
匂はしく
影なす木のま
タイプ原稿より
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(『品川陽子詩抄』平成25(2013)年10月
柏崎ふるさと人物館発行 より)
※サムネイルの画像 出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」
杉浦非水花鳥図案集
(https://rnavi.ndl.go.jp/imagebank/data/post-95.htmll)
月 下 の 戀 人(二等當選)
品 川 陽 子
さやかにも
月を吹く風か
ほのぼのと
靑草ゆるぎ
かそかなる
君が身じろき
よりそひて
あゝわれら
つかのまの喜びに
そこはかとなく
匂はしく
影なす木の間
詩 選 評
佐 藤 春 夫
品川陽子君は既に以前から馴染のある作者である。馴染の人と言へば外にも三四人名を覺えてゐる人がゐたが、みんな以前よりも面白く無くなつてゐたのに非常に失望した。品川君のも以前の最上のものにくらべるとこの作は劣つてゐる。この作者としては型にはまつた題目でもある。それでもやはりこの人でなければ能くし得ない品位と魅力とーー素香幽韻は自らあるやうに思ふ。〈中略〉かういふわけでさびしくはあるが草香、品川二君の二篇だけを發表して貰ふことにする。
「婦人之友」23(7)昭和四年七月一日發行 より
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国立国会図書館 所蔵
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品川 陽子(明治38年(1905)12月6日―平成4年 (1992) 12月12日)
本名は品川 約百
新潟県柏崎町納屋町に生まれる
詩人
佐藤春夫に師事
兄に、本郷の古書店「ペリカン書房」の品川力、弟は、版画家の品川工