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『五月の日記』品川陽子詩抄 (No.35)

     五 月 の 日 記

私達はその坂の彼方に

はげしい街のいとなみの

あることを知りつつ

いつか樂しくもくちにした
 
  坂越へて海ありと

みどりの葉影ゆらめく小徑に


かたみに手をつないだ

私達はしたしく

白いしぶきはいつか

ほゝにかゝることを夢みながら


あゝその日

ひゞきはひびきを呼ぶこゝろの

なんとなつかしく

しばしではあるが街の騒音を

のがれ得たうれしさ

           「海風」昭和十五年十月號 第六年第二號 より

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#織田文庫





               大阪府立中之島図書館 織田文庫 所蔵



品川 陽子(明治38年(1905)12月6日―平成4年 (1992) 12月12日)
本名は品川 約百よぶ
新潟県柏崎町納屋町に生まれる
詩人
佐藤春夫に師事
兄に、本郷の古書店「ペリカン書房」の品川力、弟は、版画家の品川工

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