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品川 力 氏宛書簡 そのニ

 女房をつれて、南国のあたたかい冬を、あちこちと、
さまよひ歩るいて漸くかへつてきました。わづか八日ばかにのあ
ひだでしたけれど、厭世家のぼくの気持は愉快でした。田舎の
――ことに明るい風景をもつ山家の正月はいゝものです。
又東京で、半年ほど、がさつな暮らしをするわけです。
品川陽子さんの詩をよみました。奥ゆかしいものです。
一月末ごろの日曜日には是非ひとつ、お宅へまゐりたい
と思ひます。寸暇をぬすんで、ちょっとこれをかきました。
今月は本を一頁もよめさうではありません
                   菊池与志夫


[消印]14.1.18 (大正14年)
[宛先]京橋区銀座尾張町
    大勝堂内
    品川 力 様


                       (日本近代文学館 蔵)


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[本郷・東大赤門]ペリカン書房と品川力さんと、本郷の町。(第1回)「本の配達人が住んだ町」

東京のむかしと本屋さん


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