新解釈『殺し屋1』第4回~英語タイトルは『殺し屋1』ではなく『人殺し1』
今回は『殺し屋1』の英語タイトルから、再び作品の本質に迫っていきます。『殺し屋1』の英語タイトルは『Ichi the killer』。
「killer」という単語を小学館の英和辞典で引くと、こう書いてあります。
ここで、例によって『北斗の拳』終盤に出てきたザコキャラ、コウケツ先生に突っ込んでもらいましょう。
なに?それはまちがいよ!!
小学館の英和辞典の「killer」の和訳のうち、少なくとも1番の和訳の中で、「殺し屋」という訳は誤訳と言い切っても過言ではありません。小学館は『殺し屋1』を雑誌連載してたくせに何やってやがる(再度の手のひら返し)。
英語圏の権威ある英語辞典であるオックスフォード英語辞典(Oxford Dictionary)には、こう書いてあります。
「Killer」は、日本語だと「人殺し」です。
小学館の国語辞典による「人殺し」の定義ならびに用例は以下の通り。
英語の知識がある人だとお分かりと思いますが、他人からお金をもらって自分の意志で人を殺す「殺し屋」は、英語では「hitman(ヒットマン)」といいます。
小学館の英和辞典における「killer」の内容の一部が怪しいことが分かりました。小学館に限らないのですが、日本の英和辞典はこの手の誤訳が多く、これが日本人の英語力の向上を妨げている一つの理由になっています。
最初に、念のため日本語の『殺し屋』の定義も見ておきます。
同じ小学館でも、国語辞典の説明はさすがに間違ってません。
次に、再びオックスフォード英語辞典に戻って、「hitman」の定義を見てみましょう。
「hitman」は、日本語の「殺し屋」と全く同じ意味ですね。
オックスフォード英語辞典には「Hitman」の類義語が載っていませんが、「Assassin(アサシン)」とも言います。英語版Wikipediaの「ゴルゴ13」の項目では、「assassin for hire」(雇われた暗殺者)となっています。
フランス映画『ニキータ』(1990年)のハリウッドリメイク版のタイトルも『アサシン』(1993年)でした。
これではっきり分かりましたね。
英語圏のタイトルは『殺し屋1』ではなく、『人殺し1』になっているのです。
この英語タイトルをつけたのはおそらく英語ネイティブの翻訳家だと思いますが、『殺し屋1』という作品の本質を非常によく理解しています。
イチが自らの意思を持たない5歳児レベルのロボット少年兵であることは、第2回で説明した通りです。
ですので、英語圏の人から見ると「これ、殺し屋(hitman)じゃなくて単なる人殺し(killer)じゃね?よく読むとジジイもろくに金払ってないし」となったのだと思います。
そりゃジジイの洗脳指令により殺人シューズで人を輪切りにして、TNKをしごいて射精するようなド変態サディストの異常者は、日本でも「殺し屋」とはいえないでしょう。
ゴルゴ13やケンシロウがそんなことをやったら、抗議殺到で絶版・回収扱いになってるはずです。
ですので、日本語圏の読者は『殺し屋1』というタイトルに騙されてる面があるんですね。
これは「殺し屋マンガ」ではありません。
ジジイにマインドコントロールされたロボット少年兵イチによる「人殺しマンガ」です。
この誤解も、実は山本英夫先生の一つのねらいだったのかも知れません。
ちなみに、中国語では「殺し屋」も「人殺し」も「殺手」となります。また、中国語圏では愛称として「阿」をつけるので(例:魯迅『阿Q正伝』)、『殺し屋1』の中国語版のタイトルは『殺手阿一』になります。
英語の「Killer」の類義語に「Terminator」というのがあるので、『殺し屋1』の新タイトルとして『ターミネーター1』というのも面白いかも知れません。
ただし、これをやると映画『ターミネーター』の商標と版権持ってるワーナー・ブラザースから確実にクレームが来ると思いますがw
正式コラボで、サムズ・アップしたイチをエンディングで、溶鉱炉に沈めるというのもありかも知れない。デデンデンデデン…デデンデンデデン…全米が泣いた!(元ネタは『ターミネーター2』)
いやー、言語って、本当に面白いですね。(故・水野晴郎さん風)