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No,271.陰謀論を信じる人たち


はじめに

COVID-19感染禍やロシアのウクライナ侵攻をめぐる陰謀論がSNSを通じて流布されたり、米国大統領選挙をめぐってQAnonと呼ばれる陰謀論に基づいた政治運動が連邦議会議事堂襲撃事件にまで発展した。

近年、SNSの普及と不安定な社会・政治的情勢に伴い陰謀論が人口が増えたという。

個人的には根拠も乏しく、そもそも陰謀ならなぜ末端の人たちが知っている(情報が洩れる)のだろう?と不思議です。

素朴な疑問から陰謀論を信じる人はどんな特性の人達なんだろう?

陰謀論者

陰謀論と個人特性との関連については、認知特性(解釈の仕方)から動機づけ(モチベーション)、パーソナリティ(性格特性)、精神病理学的特性(医学的知見)まで広範な検討が行われている(Douglas & Sutton, 2023; Pilch et al., 2023)。

陰謀論を信じるひとの傾向として権威主義、妄想との正の相関を示し、機関への信頼とは負の相関があることが示されている。
つまり陰謀論を信じる人は、強い者を支持し(権威に弱い)、妄想傾向があり、国や自治体といった公式な機関をあまり信頼しない人だといわれる。

大薗ら(2023)は陰謀論者とアノミー(社会的なつながりやコミュニティの一体感が薄れ、孤立感が強まり目標や価値が失われ、やる気や希望を失う状態)や協調性が低い不安傾向と関連があると示している。

また、パラノイア(注1)という現実にはない危険や陰謀を信じ込み、自分が常に監視されている狙われていると思い込むことが多い。
現実の証拠がないにもかかわらず、過度な疑い深さと恐怖心を持つ状態といわれる。
(注1)パラノイアとは精神病の一部とされ、統合失調症や妄想性障害などの診断に含まれることがある。治療には、心理療法や抗精神病薬が用いられることが多い。

陰謀論の抑制と対策

学問の本質はクリティカルシンキング(批判的思考)だろう。

筆者作成

批判的思考については自分自身も教えられてきました。
クリティカルシンキング(批判的思考)とは、現状の課題・問題が何か、その事象を「批判的」に捉えて、本質的な課題は何か、それに対する仮説・回答は何かということを網羅的に、かつ深く考え抜く思考法のことです。

A Lantianら(2021)の研究でも、陰謀論を信じる人ほど批判的思考テストの結果が悪くなることを示している。

さらに熟慮的思考が陰謀論に惑わされないと示されています。

このような問題があります。
「バットとボールは,合わせて1100円です。バットはボールよりも1000円高いです。では、ボールはいくらでしょう?」

①100円 
②50円
のどちらが正解ですか?

正答は50円です。
パッと考えると正解は100円だと答える人が多いと思います。

人は簡単な引き算で間違った答えを導き出しがちです。
もしボールが100円だとすると、バットは1000円高いから1100円になります。つまり100円+1100円で合わせて1200円。

正解は50円です。ボールが50円なら、バットは1000円高くて1050円。
50円 + 1050円 = 1100円。
簡単な問題に見えるが、こういうトリック問題は案外ひっかかりやすい。原因は熟慮(よく考えをめぐらすこと)していないからです。

大薗ら(2023)は、熟慮的思考が陰謀論信念を促進する個人要因の効果をさらに増幅させることはほとんどないことを示唆しており、熟慮的思考を養うことは陰謀論信念を減少させる上で効果的な対策であることを示している。

おわりに

陰謀論については政治関連の話でよく耳にします。

筆者作成

例えば、 米共和党支持者のおよそ3分の1は、歌手のテイラー・スウィフトが政府の密かな取り組みに関与しているとの見方を示した。取り組みは2024年大統領選でジョー・バイデン氏を支援するためのものだという。モンマス大学が14日に発表した世論調査で明らかになった。

批判的思考や熟慮的思考を高めることが陰謀論に巻き込まれない要因の一部であることは研究でも示されています。

以上のことから

知識を身につける、その方法を学ぶことは重要であることは自明だろう。

最後まで読んでいただきありがとうございます(^^♪

参考文献

A Lantian, V Bagneux, S Delouvée, N Gauvrit(2021)Maybe a free thinker but not a critical one: High conspiracy belief is associated with low critical thinking ability

H Ozono, R Sakakibara(2023)「陰謀論信念に影響を与える個人要因に対する熟慮的思考の調整機能の検討」

原田佑規・原田悦子・須藤智(2018)「認知的熟慮性検査(CRT)における項目間等価性および呈示順序・教示効果の検証 : 大学生集団実験による検討」『筑波大学心理学研究』第56巻、pp. 27-34



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