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14.ウシの基本的な運動構造 内側優位

重荷を引く大会のようですね。ちょっと調べたところ、アメリカのロードアイランド州バーリントンというところで催されているようです。フォークリフトでちょっとずつコンクリートブロックを増やしていくので、徐々にウシの踏ん張りが変わっていくのが面白いところです。

ウシは内側優位 腸骨筋と肩甲下筋

この動画だけで理解するのは難しいとは思うのですが、ウシが四肢の内側で踏ん張っているのが見て取れるでしょうか?重くなるほどに、後肢が斜めになり、その内側に荷重が掛かっております。

筋肉でいうと、後肢では腸骨筋、前肢では肩甲下筋です。ほか内側系の靭帯にも負荷を寄せているのですが、ひとまず腸骨筋と肩甲下筋を観察してみてください。

堪える仕組みと引く仕組み

内側荷重が見えてきたら、四肢の伸展に注目してみてください。内側に目一杯負荷を寄せながらも、適当に多関節伸展系にも負荷を配ります。そして多関節伸展系が多関節同時伸展をして具体的に重荷を前に引きます。堪える仕組みと引く仕組みが分離しているということです。

重荷が軽いうちは目立ちませんが、重くなるにつれ分かりやすく動作が区分されます。うまく引けなかったときは、多関節同時伸展の出力がすっぽ抜けてお尻が上がってしまったりしております。

比較としてウマの外側優位 臀筋と三角筋

イントロが長いので、2:00〜くらいからご覧ください。

前回書きましたように、ウマは外側優位です。主な注目筋肉は、臀筋と三角筋になります。

比較してみると、ウシとウマでは結構引き方が違うのが分かると思います。ウシはじんわりと引いていたのに、ウマはぴょんこぴょんこと慌て者のような引き方です。

ウシがじんわりと引けるのは、体を前のめりにすれば、簡単に内側に体を預け続けることが出来るからです。そして内側に預け続けていれば荷を引き続けることになります。

ウマは外側に預けるので、体を前のめりにするほどに外側に形成された壁にぶつかる感じになります。
なので負荷と姿勢の限界がくるとピョコンと跳ねることになります。この限界値を先延ばしするために、ウマは前肢後肢ともに前よりに足を出すのですが、それでもあっという間に跳ねてしまいます。跳ねるのでまた足を前に投げ出し、また跳ね、と忙しく繰り返すことになります。

荷物の重さがほどほどであるなら、ウシもウマもたいして変わらない運び方になりますが、こうして限界に近いところで作業をすると、運動の基本構造がはっきりしてきます。

人間にもある

人間は多様な運動構造をもつ生きものです。その多様さは、自然界の中では種の違いに匹敵するばかりでなく、科(ネコ科とかイヌ科とか)、目(もく。偶蹄目とか霊長目とか)をまたぐ幅広さがあります。

チーターのように柔軟な背骨を持つ人もいれば、有蹄類のような背骨の硬さを持つ人もいます。その背骨の硬い中でも、内側優位の人と外側優位の人がおります。性質をあらわすときに、ネコ型とかイヌ型といった言い方がありますが、動作構造を見たときにも、そうした型があります。
面白いのは、人間の場合一人の中にネコ型とウマ型が共存していたり、新しい運動を習得してウシ型になったり出来ることです。

大雑把にいって、内側優位の人は内向きの性質が強くあり、外側優位の人は外向きの性質が強くあります。

こうしたわけで、多様性の理解とは、わたしにとっては運動構造の多様性を理解することがメインです。

※有蹄類の背骨の硬さは、動かない硬さではなく、高負荷に対応するべく弾性応答を維持している鋼鉄のような硬さのイメージです。

木村政彦

なかば余談なのですが、わたしは木村政彦が好きで、木村の動きや体についてしつこく考えてきました。今のところの結論ですが、木村政彦は有蹄類の背骨とウマ型の外側優位性を持っていたと考えております。

木村のエピソードに、走り出した路面電車をつかまえて引き戻した、というのがあります。よほどの剛体感と剛力感が体にみなぎっていないとやる気にもなれないことです。また筋力だけあっても、骨と靭帯が鍛えに鍛えられていないと骨折してしまいます。つまり力も桁違いなら物質的にも桁違いに剛の人であったと思われます。そしてこのエピソードが中年以降の悪ふざけだったことを考えると、さらに驚異的です。

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