今日の1100字小説「ファミリーな朝」
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だめだ、昨日のことが頭から離れない。
起き抜けのカフェオレを飲みながら、また昨晩のやりとり思い出していた。寝室は別だから寝る時に顔を合わせることはなかったが、向こうが起きて来たらちゃんと話せるか不安だ。
カナデが急にあんなこと言うもんだから。思わず家族だなんて…。いきなり言って引かれてないか心配だったけど、あいつはやたら喜んでくれたな。
「友達だと思ってる?」って、一緒に住んでて今更なにを言ってるんだと思ったけど、カナデは気になってしまったことは聞かずにはいられない性格なんだよな。ちょっと子どもみたいだ。
日曜日だし、しばらく起きてこないだろう。先に朝食を作っておくか。
…あいつ、家事を私に任せすぎてるって自覚あったんだ。ちょっと揶揄だけなんだけどな。かわいかったな。自分は家事全般を楽しんでやれるからなんとも思わない。むしろ一人でいるより世話を焼ける相手がいる方が張り切ってやれる。だからカナデが居てくれるだけで生活にハリが出る。
こういうことも言ってあげた方がいいのかな。ちゃんと言い合うのもルームシェアを続けるには必要なことかも。でも口にするのは恥ずかしいし。
両手を顔に当てて伏せる。また恥ずかしさが込み上げてきた。
んんー、にしても家族は言いすぎたかな。向こうが親友って言うから、なんかこう、負けてられないみたいに思っちゃったんだよな。恥ずかしかったな。
「どうしたの?」
え!?びくっとなって顔を上げる。カナデがあくびしながら立っていた。
「起きるの早いな」
「へへ、朝ごはん作ろうと思って」
カナデも昨日のこと気にしてるのかな。いいのに。
「そっか、じゃあお願いしようかな。カナデの料理、楽しみ」
思ってることは言っておかないと。うん。
「やー!朝ごはんでそんな期待しないで!」
なんだかんだ私より凝った料理を出してくるところがズルいんだよな。ちゃんと器用だし、ちゃんと研究するタイプ。
「ねえ、昨日の話、あれ、お互い忘れない?」
ワンナイト後のカップルみたいな言い回しになってしまった。
「え?やだやだ、なんでそんなこと言うの!せっかくファミリーになったのに!」
こいつ“ファミリー”気に入ってるな。
「パートナーもだいぶ恥ずかしいけどな」
「あ、ひどい!いいじゃん、パートナーでファミリーで、無敵のコンビだよ!」
また熱くなってきた。こいつ全然否定しないじゃん。どんどん恥ずかしくなるだけだ。あっ。
「わかったから。玉子焼き焦げるよ」
「あーもう!ナオのせいだからねー!」
出来上がった玉子焼きはちゃんとおいしかった。
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