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ショートショート「細かすぎて…」(お題「誤字審査」毎週ショートショートnote)
「続いてのエントリーはこの本です」
冬眠社の営業担当が、審査員に本を差し出す。
「ふーん『泣いても笑っても日暮里人』ねぇ。何ページに誤字があるの?」
「タイトルです」
「え? タイトル?」
「正式なタイトルは『泣いても笑っても日本人』です」
「うわー、盛大にやったねぇ! 最高じゃん! 採用採用!」
冬眠社の地下にある大ホール。普段は出版披露パーティや式典に使う大広間だが、年に一度、その年に出されたあらゆる出版社の書籍が集められる。
「それにしても、誤字脱字っていくら見返しても無くせないもんだねぇ」
長年ゴシップ誌の編集長をやっていた文田春彦が書籍部門に異動してきて最初に出した企画『細かすぎて繕われない日本語』。読者に誤字を探させ、見つけた誤字がこの本に採用された読者には賞金が与えられる。
ここに収録されることは書籍編集者にとって最大の汚点とされたが、賞金と名誉を求める読者のおかげで出版業界全体の売上は底上げされたという。
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