私が偽善者になったとき―失語症の人々と言語聴覚士の美馬さんが気づかせてくれたこと
2016年の冬は、文化人類学者を志してから10年と少しが経過した時だった。
自分も少し人の話を聞くことが上手になってきたのでは、と思っている時期である。
でも私はまさにその時に、奥底にある偽善に満ちた自分にいやおうなく向き合うことになってしまった。
今回は、2015年6月に出版した『医療者が語る答えなき世界—いのちの守り人の人類学』(ちくま新書)の取材中のお話です。美馬さんは「共鳴—旅する言語聴覚士」に登場する言語聴覚士さんで、お名前は匿名です。
失語症?2016年の