2021-06-09 ループと世界旅行
暑くなった。
皮膚に感じる熱気の質感が明らかに変わった。
どうやっても逃れることはできないのだなこちらに諦めるさせる強い力だ。
Keyの新作ゲーム『LOOPERS』を始めた。
「時の渦」に巻き込まれた主人公たちは8月1日を繰り返す。記憶だけが引き継がれてそれ以外のことはすべてリセットされる。昨日と変わらない今日。今日と変わらない明日。なにをしてもなにもしなくてもいい。
ところで最近の私はとても暇をもてあましている。
おそらくそこらの大学生よりもずっと。しかし世の中がこうなので基本的には家で一日の大半を過ごしている。まるでループしているような代わり映えのない毎日だけれど、どんどん暑くなっていく外気が時の移ろいを知らせる。
『洗面器でヤギごはん』(石田ゆうすけ)を読んだ。
人から勧められ借りたのだが、これがめっぽうおもしろかった。自転車で世界一周する旅のなかで味わった食のエッセイ。50以上の国、「リソース」とか「フーフー」とか聞いたことのない名前の料理。世界には実に多様な食文化があるのだと知る。また食べたときの味の表現がとても上手い。実際に食べてみたくなる。たとえばこんなかんじ。
焼き上がったハンバーグはむっちり膨らんでいて、噛むとブロックベーコンのような弾力があった。味はやはり牛や馬に近い。野生動物特有の荒っぽさやクセはかすかにあるが、ほとんど気にならない程度だ。むしろ脂肪分が少ないせいか、後味が非常にすっきりしている。
アスペンの葉が青空の下で揺れ、何万という葉のこすれる音にぼくたちは囲まれていた。
石田ゆうすけ『洗面器でヤギごはん』 幻冬舎 2012年 p.26
豊穣な大地を思わせるトルティージャの芳香、それがふわっと鼻に抜け、素焼きパンの薄皮がさっくり破れたかと思うと、肉汁がジュワッとあふれ出し、アツアツの肉の熱が頬に伝わってくる。同時にレタスのシャキシャキした歯ざわりや、トマトの爽やかな酸味、コリアンダーの鮮烈、それらすべてが口のなかで炸裂するのである。
石田ゆうすけ『洗面器でヤギごはん』 幻冬舎 2012年 p.45
世界旅行したい!
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