ヘッドフォンのメンテナンス SONY MDR-CD900ST
ソニーのMDR-CD900STという、レファレンス機とも言うべきヘッドフォンをずっと使っています。
レファレンス機、つまり標準機というのはどういうことかと言うと、音楽制作の際に基準というか参考にするヘッドフォンということです。
音楽というのは現場実演以外ではスピーカーやヘッドフォンで再生されるわけですが、これがその個体ごと、設置環境ごとに聴こえ方が全く異なります。
そこでできるだけ「普通の状態」の基準として、明確に制定されているわけではありませんが、音楽制作の際に参考とするスピーカーやヘッドフォンがなんとなくですが存在しています。
そんなヘッドフォンの一つが、私が使用しているソニーのMDR-CD900STです。FIRST TAKEで見かけたことがあると思います。
レファレンス機というのは、悪く言えば没個性であるということです。個性があっては標準・基準にはならないからです。つまりそれは往々にしてつまらない音、であるとも言えます。その通りだと思います。
でも私はそれを承知で使っています。それは制作者が意図した音を、私の好き嫌いとは無関係に、まずはそのまま忠実に再生してくれるからです。
その上で、グラフィックイコライザーなどで自分の耳の特性とか、好みとかに合わせて、低音中音高音を細かく調整しています。私が使っているのは、Audio HijackというmacOS用のソフトウエアです。下のスクショが、私の老化した耳に合わせた、自分の音の好みに合わせた補正状況です。
これは厳密に言うとというか、本当は楽曲単位で補正する必要があると思います。それは楽曲ごとに録音状態は異なりますし、その楽曲に対して個人の好みが異なるからです。
おそらくですが、もうしばらくすると最初に個人の設定を行うと、AIが楽曲単位での周波数分布特性を分析して、個人に対して最適化した補正を楽曲単位で行ってくれる、なんてのも登場するのではないかと思っています。
そんなMDR-CD900STは20年以上、もっとかも、使っているように思います。これまでにイヤーパッド、耳当て部分が劣化したので2回交換しています。今回また耳当てがぼろぼろになってきたので交換することにしました。
その際に本体を分解したのですが、内部のパーツも劣化しているのが分かったので、合わせて交換することにしました。
写真の左側はイヤーパッドではなくてさらにヘッドフォンカバーです。これを着けるとイヤーパッドに直接耳が当たらないので、汗などに劣化を遅らせることができます。
右上はウレタンリングと言って、 イヤーパッドのネットがドライバーユニット(音を出す本体)に直接当たらないようにする緩衝材です。音にはあまり影響はないと思いますが、耳たぶへの当たりが優しくできます。右下はミクロングラスと言って、グラスウール、ガラス繊維です。これがヘッドホンユニットの裏側のケース部分に挿入します。これはかなり重要で、ヘッドフォンユニットが発生させる空気の振動を吸収することで、特に低音域の響きを良くする役割です。スピーカーの中には必ず入っているもので、それのヘッドフォン版です。
このヘッドフォンのいいところは、基本はプロ仕様なので全てのパーツが純正品としてソニーから普通に販売されていることです。普通のヘッドフォンではこうしたパーツの入手は困難だと思います。
メンテナンスされたヘッドフォンで早速試聴してみました。自分のレファレンス楽曲でメンテ前後を聴き比べていますが、明らかに低域が聴こえるようになりました。やはりミクロングラスを20年以上放置していたのでその違いは明らかでした。
実はこうしたレファレンス機というのは、決して高級品ではありません。高級品では標準にはなり得ないからです。このMDR−CD900STは1989年の発売開始以来、現在でも普通にソニーが販売していて、定価19,800円実売は15,800円と決して高いものではありません。AppleのAirPods Maxの8万円超えと比べたら高品質で激安ではないかと思います。
メンテナンスも容易なので、選択肢としては悪くないと思います。唯一の難点を上げるとすれば、プロのスタジオでの利用を前提としているので、音漏れには何の配慮もされていませんので、電車の中で大音量で鳴らすと超迷惑なことです。
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