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身動き一つせず湯とじっくり向き合う 「霊泉 ままねの湯」 (神奈川 湯河原)

近くに来たので、前からずっと気になっていた湯河原のお風呂をいただきました。ここのお湯は評判通りめちゃくちゃ熱いです、めちゃくちゃ強いです。サウナ以上にととのいます。そしてなんと300円です。

場所は湯河原の温泉街の中心部。湯河原駅からは奥湯河原行きのバスで10分ほど。駅からゆっくり歩くと30分くらいです。

温泉の名前は「霊泉ままねの湯」といいます。霊泉ですが冷泉どころではなくで源泉は81度もあります。

まず最初に大事なことから。ここは温泉ではないのです、湯治場です。ですから露天風呂などといったエンタメやリラックス要素は一切ありません。身体と向き合い、お湯と向き合い、心身ともに治療を行う場です。

源泉かけ流しですが、投入されている湯量が少ないので、入湯に際しては必ず石鹸で体をきれいに洗う決まりになっています。これは入館時にきっちりと言われます。かけ湯ではダメです。

脱衣所から浴場を臨みます。女湯もだいたい対称型の配置のようです
左手前の洗い場。洗い場用の腰掛けはありません。蛇口は81度の源泉と水の2口で、自分でブレンドします
タイルと大理石。奥に見えるのが湯口です

湯量が少ないのは噴出量が少ないと言うよりは、81度もあるので源泉をドバドバ投入すると大やけどをするからです。かといって水を投入するとせっかくの温泉成分が薄まってしまいますので、湯船に投入されるまでに自然に温度を下げるような経路を伝わせている気がします。(そもそも直接湯船に水を入れることはできない構造になっています)

湯船の泉温は45、6度あると思います。私も加齢に従ってどんどんと熱い湯が平気になり、熱い湯が好きになってきましたが、それにしてもここはかなり熱いです。湯船では身体を動かさずにじっとしていないと更に熱く感じてしまいます。

このあたりが非常に微妙といいますか、重要なポイントではないかと思います。

じっとして熱さに堪えることで、温泉成分が体内にじわじわと染み込んでくるような気がします。刺さってくると言った方が的確な気がします。普通の温泉のような生ぬるい温度だと、腕を使って首や肩に湯をかけたり、足の曲げ伸ばしをしたりするじゃないですか。あれをやるとお湯だけに集中できないことに、ままねの湯ではじめて気がついたのです。

この熱さだと身動き一つせず、ひたすら湯と向き合うことができるわけです。湯との一本勝負とも言えます。

「湯道」という映画がありましたが、あの映画にはそんなことは描かれてはいませんが、ここは「道」に近いものを感じます。

浴槽内も一般的には強制循環とか、湯口からドバドバ湯が流れ出ることによって波紋や流れができますよね。それがままねの湯には一切ありません。あるのは湯の静寂のみ。お湯は浴室の片隅にある湯口からチョロチョロと出ていて、これが床に埋め込まれていると思われるパイプを経由して、浴槽に静かに音もなく投入されるのです。

わかりにくいですが湯口です。チョロチョロといった感じの湯量です

なので誰も入っていないときはお湯はピクリともしない静寂を保っているのです。

お湯は透明です。一般的にはにごり湯の方がわかりやすく温泉ぽいのですが、ここはそういうカモフラージュが一切ありません。更に緑とも青ともつかない、神秘的ともいえる色が有り難み感じさせてくれます。これが霊泉たる所以なのでしょう。

硫黄臭は全くなく、わずかに苔というか、植物っぽく感じるような匂いがあります。味はほんの僅かに塩味を感じます。

ピクりともしな美しいお湯
近寄るとそれほど緑でもないです。天井の蛍光灯のスペクトラムに対して、湯の成分による屈折率の組み合わせで、実際以上に緑っぽく見えているのだと思います
成分分析表。アルカリ性ではありますがそれほどきつくはない。他のイオンの数値を見る限り、突出したものは見受けられません

湯船でしばらくじっとしていると、先程書いたように温泉が身体に刺さってくるような感触を感じるようになります。私は5分くらいしか連続で入ることができず、一旦湯から上がって休憩をします。1つだけ椅子も置いてありましたのでそこに座りました。

この時身体は真っ赤になっています。でもとても心地よいのです。

こうしてクールダウンをしていて気がついたのは、これはサウナのあとの水風呂の後に訪れる「ととのう」と呼ばれている感覚にも少し似ているのです。ととのうというのは流行語ですし、人によってそれは異なると思いますが、ここでのととのいは血が流れている感覚、血行が良くなっている感覚、体中を何かが駆け巡っている感覚です。

運動をしているわけではありませんから、心拍数はそれほど上がっていないと思いますが、血液だけがぐるんぐるんと動いていることを感じるのです。

そうするとそれまで淀んでいたもの、それは物理的なものだけではなく、精神的なものも含めて、一気に浄化してくれているような気がしてきます。

出たり入ったりを3セットくらい繰り返して、さらに30分くらいかけてゆっくりクールダウンさせてから着替えて外に出ました。すると、肌の感覚が敏感になっているというか、感度や解像度が明らかに上がっているのです。

入口右下に見えるのは温泉を購入するための湯口


最後に追記しておくと、最初に受付で「湯治ですか?」と聞かれるので、迷わず「はい!」と答えましょう。こうしたことを聞いてくるのは、要は「秘湯を守る会」みたいに秘湯ブランドの観光温泉にしたくないからではないかと思います。繰り返しますが、ままねの湯はあくまでも湯治場です。先ほど冒頭で「お風呂を頂いた」と書きましたが、そうした物言いでさえも正しくない気がしてきます。家族や大勢でスーパー銭湯に行くノリだと断られるかもしれません。

お湯から出て2時間経過しても、まだ体がクリアで高解像度な状態です。泉質と高温な温度のせいだと思います。

料金は1時間300円となっていますが、1時間もいられないと言うか、そんなに長くいる必要はないです。

タオルと石鹸は持っていきましょう。現地で購入もできます。駐車場もあるようです。高温ですから子供さんは無理です。大人でも人によっては熱くてだめかも知れません。

うちからも比較的近いので、月に1、2回は通ってみようかと思いました。
なおままねの湯は湯治場ですので宿泊もできるようです。正確な情報かは定かではありませんが、1泊2食で7000円らしいです。

WEBサイトはありません。
霊泉ままねの湯旅館
所在地: 〒259-0314 神奈川県足柄下郡湯河原町宮上616
電話番号: 0465-62-2206


およそ1ヶ月後に再訪しました。

【蛇足】
湯河原に行かれた際には、こちらのラーメンが超おすすめです。ただし、リンク先の記事をごらんのうえで、覚悟を持っておでかけください。私は半常連でして、どういうわけか兄+母組という扱いになっています。ここは同じお店でダブルスタンダードでして、弟+舎弟(ダイスケ)組の方が味が落ちるようです。この日ももちろん行きましたよ。
繰り返しますが、何が起きても冷静にラーメンだけを食べられる自信がある方限定です。スマホは出しただけでもNGです。味は間違いないです。


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