鰻の成瀬はいきなりステーキと同じ道をたどるか
私の母方は130年以上の歴史がある鰻屋です。とんでもなく美味いです。刷り込みでしょうけど、そこ以上の鰻に私は出会っていません。たぶん出会うことはできないと思います。子どもころは毎月行っていたので、もうとうの昔に一生分のうなぎは食べたと思っています。
で、今年の夏の私的な鰻のランキングです。
・うな新 うな重特上(平塚)
・吉野家 うな丼2枚盛(大船笠間口店)
・うなぎの成瀬 上鰻重松(八王子店)
・すき家 特うな丼(八王子みなみ野店)
・うなぎの成瀬 上鰻重松(葉山店)
こうして並べてみると結構食べてますね。でも全部お安いお店ばかりです。価格や手軽さなどを考慮していますが、吉野家さんは悪くないです。バーナーで焦がしたらかなりいいと思います。うな新さんはとにかく予約が取れません。改装後は以前よりは味は落ちました。
何かと話題で急成長中の鰻の成瀬さんはちょっと中途半端な気がします。新しく開店した葉山店は元は蕎麦屋さんでした。今回近くにできたという理由だだけで鰻の成瀬さんに再訪しましたが、こんなに脂が多い、脂くどい鰻ははじめて食べました。
既存のお店がこうして成瀬さんに変わっていく理由(店主などの高齢化と客単価の低さからの脱却)はかなり理解できましたが、肝心のお客さんがちゃんと継続して根付いてくれる気はしませんね。急速に客がいなくなったいきなりステーキさんに似た印象です。
味はとにかく脂がきつかったです。私は関東風の蒸して脂を抜いてしまうような鰻の調理法は邪道であると言い切る人なのですが、それにしても脂まみれ。
鰻の旬は実は冬なのです。土用の丑というのは、平賀源内が広めたマーケティングであるという話は、広告の教科書の最初のページに書いてあります。 夏場に客が来なかったので、鰻で精をつけるという宣伝をしたわけです。あとは匂いもわざと周辺に放出するとか。でも真偽の程はやや怪しい気はします。
10月末のこの時期はまだ脂が多いわけではないはずですが、国内養殖の餌のせいなのでしょうか、とにかく脂がきつかったです。
成瀬さんは八王子のお店に一度行ったことがあって、再訪はないと思っていましたが、近くにできたからという理由で行ってみたわけです。八王子店では焼きの甘さが気になったので、よく焼きをお願いしましたがまだ焼きが甘いですね。おそらく使っている電気の焼き器がうまく調整できないんだと思います。
電気が悪いわけではないです。炭焼きの方がいいのは当然ですが、火力のコントロールがものすごく大変なのです。備長炭とか使うとそのコストだけでとんでもないお金と手間がかかります。その点電気はヒーターはコントロールが極めて容易な割には低温でじっくり焼けるのです。
成瀬さんの特徴というか、安く提供できるポイントは職人でなくとも誰でもスイッチポンで蒲焼ができる点ですから。
確かに安いですが、だったら吉野家さんと比べてみてくださいと言いたい。だったら名代宇奈ととさんの方が圧倒的に安い。かといってなんちゃってイタリアンではあるけど、安くて美味しいサイゼリアさんみたいなポジションでもない。
マーケティングといいますか、商品やサービスのポジショニングというのは、特に外食では本当に難しいです。鰻の成瀬さんも数年で息絶えないように頑張ってもらいたいです。