『おそろし』三島屋変調百物語事始

宮部みゆき
2012年 角川文庫

宮部みゆきさんは、私的【気持ちが重い作家さん】の一人。
自分の気持ちが重くなるというより、いやそれも含むんだけど、記述の仕方がものすごく情が溢れていてその情が深くて多くて重く感じる、ということ。あとは、乙川優三郎さんとか。

何年も前、私が読書好きの親に乙川さんの本を勧めた際に「そういう重いのは年をとるとしんどい」と話していてそんなものかと思っていたけど、それが分かるようになってきたということは私も年をとってきたということだな。今の世の中だけで十分しんどいから、これ以上はノーサンキューという感じ。

宮部さんの本も、『模倣犯』なんかはもう一度読むのはしんどい。
でも面白い。
現代ものは結構読んでしまったし、時代もの読んでみるかと思ってだいぶ前に手を出したのが、この三島屋シリーズ。大きな流れはあるものの、基本的には物語の一つ一つが独立しているようだから、最初に読んだのは途中のもの。今回のこの『おそろし』が三島屋の一番始めの物語だった。

途中の物語は、偶数がほんわかで奇数が怖いだったかその逆だったか、とにかく怖げな話ばかり続くわけではないので安心だったが、『おそろし』もそのつもりで読んだら、私にとってはほとんどが怖い。彼岸花とか、蔵から呼ぶとか、読んだ後でも脳内再生して怖がれる(いやだけど)。しかも読むのが止まらず真夜中まで読んでしまったので、怖さ増し増しで怖かった。止めときゃよかったと思った。

目に見えないものを完全に信じているわけではないけれども、人間が感知できないことや科学で証明しきれていないものもたくさんあるのだろうとは思っている。自分の身の回りには、怖いことではなくて、ほのぼのすることが起きてほしいと切に願う。

人間とは身勝手で悲しいものだね。
この巻では最後に救いがあるから少しは良かった。


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