世界各地が写真で・ネットで見られる昨今に「行かねばわからぬ」場所がある。その行動力に脱帽です。
『イラク水滸伝』著者の高橋秀行氏は、異世界ファンタジー的な文化の場所にリアルに入り込みます。
過去の著書『幻獣ムベンベを追え』『謎の独立国家ソマリランド』も、何?どこ? という興味深さ。
Amazonのレビューも読みごたえがあり、非日常を味わいたい時によさそうです(^^)。
足かけ6年かけて取材・執筆した『イラク水滸伝』(文藝春秋)がようやく刊行された。これまで30冊以上の本を書いているが、こんなに取材と執筆の両方が難しかった本はない。イラクは国自体がカオスで、その中に湿地帯というカオスが存在するという「二重カオス」状態。
今でも文字の読み書きを知らず、水牛を飼い、浮島で移動生活をしている人々がいるが、彼らが伝統的に使用している舟は5千年前のシュメール人とそっくりのもの。そのシュメール人は文字を発明し、5千年前に土地の賃貸契約書を交わしていた。古代へ遡ると文明がはるかに進歩しているという「逆タイムマシン」状態を何度も味わった。
中国の水滸伝のように、イラク湿地帯「アフワール」には戦争に敗れた者、国家から追われたアウトロー、迫害されたマイノリティが逃げ込んでいた。「2千年前の新興宗教」マンダ教やフセイン政権と戦った「湿地帯の王」といった興味深い人々とも出会った。
いや、とにかく、ここでいくら説明しようと思ってもできない…。
この気持ちは初めて『幻獣ムベンベを追え』を書いたときに似ている。あのとき、知人友人に「怪獣いた?」と訊かれて「いや、いるとかいないで済む話じゃないんだ」と思いつつ、返事に窮して苦笑いを浮かべていた。でも本を書いたら、読んだ人たちが私の体験と気持ちを共有してくれた。それがすごく嬉しかったから私はライターになろうと思ったのだ。
今回の本は三十数年後の「ムベンベを追え」だと思う。あの不可思議で魅力的な世界をみなさんに共有していただければ、こんなに嬉しいことはない。
あ、あと水滸伝を知らなくても大丈夫ですから。水滸伝どころか中東情勢も古代文明を知らなくてもOK。興味がなくても全然かまわない。なんせ私は、日本人の誰もが知らないし興味もないソマリランドとソマリアの本を何万部も売った男。面白いSFや異世界ファンタジー(でもリアル)を読むつもりでどうぞ。
今回は旅の相棒としては最強の「山田高司隊長」に同行ねがった。「世界で最も多くの川を旅した男」「レジェンド探検家」の山田隊長の知識経験見識は驚異的だ。でも現地では似顔絵描きとして人気を博していたが…。
私が三十数年の辺境旅と物書き人生で得たすべての技術と知識をつぎ込んだ集大成作品をよろしくお願いします!!
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