第 6 回「共創でつくる自治体条例」講師:高村 学人(立命館大学 政策科学部 教授)テーマ:法や条例の内容に私たちが従う理由と要因について、具体的な自治体条例をあげ、講義の内容踏まえて説明して下さい。50点/100点 不合格レポート
第 6 回 「共創でつくる自治体条例」 講師:高村 学人(立命館大学 政策科学部 教授)レポート課題 テーマ:法や条例の内容に私たちが従う理由と要因について、具体的な自治体 条例をあげ、講義の内容踏まえて説明して下さい。
以下に小笠原村海亀解体場条例について、講義の内容踏まえて説明する。
まず、補遺や条例の内容に私たちが従う理由と要因については、条例委任する場合の基準設定の類型として、「従うべき基準」型、「標準」型、「参酌すべき基準」型の3つに類型される。法的効果として、「参酌すべき基準」とは、十分参照しなければならない基準、「標準」とは、通常よるべき基準、「従うべき基準」とは、必ず適合しなければならない基準となる。今回の小笠原の同条例については、「標準」型に分類される。その理由として、地域の実情に応じて、合理的な理由がある範囲内で、条例内容が記載されている点にあげられる。小笠原独特の海亀に関するものについて対象となっている条例であるからである。
この条例は昭和59年に制定されたが、その目的は、条例の第1条によれば、地場産業の育成に必要な施設として、小笠原村海亀解体場の設置等であったと言える。
これらは、各地の文化的資源の発見や創生時代の条例づくり、条例制定のイノベーションなどの本講義で取り上げられている現代の条例制定の趣旨について、例えば、文化的資源や自治体の独自性が含まれているものと言えるのではないか。
目的である、地場産業ということでは、地域の独自性を意味するところであり、さらに、海亀という小笠原ならではの海洋生物である独自性を有している条例である。
ネット検索[1]等では、実際に海亀の解体場が使用されているかどうかは探し切れなかったが、この条例については、近年において大幅に改定されておらず、創生時代の条例づくりに進化させる可能性を秘めているのではないかと提案したい。
この条例が事実上制定後実効的な有用がされていない理由を以下に考察したい。
1973年(昭和48年)からは、ウミガメ漁[2]は東京都漁業調整規則により、頭数制限されるようになった。また、ウミガメは絶滅危惧Ⅱ類[3]とされレッドリストに登録(登録日不明)されるようになっている。このことから、昭和48年においては、ウミガメの乱獲を防ぐために、村として適正に地場産業の育成に必要な施設として整備されてものの、ウミガメはレッドリストに登録され、実質的にウミガメの解体が制限されるようになり、条例が当初の想定よりも適用される機会が減ったものと推測されることを理由としたい。
そこで、この条例に実効性を持たせる必要としては、埋もれている条例の価値を掘り起こし、社会的利益の明確化・再評価が可能であると考える。地域社会において共有されることが期待される条例の改正すべき方向性について以下に述べたい。
例えば、清酒条例などで挙げられていた、強制力はないものの乾杯しましょうという緩やかな努力規定などをこの条例、いわゆる「参酌すべき型」の項目を付け加えることができるのではないか。もしくは、新たな条例を作り、ウミガメに対して、文化的資源への意味づけという観点から、ウミガメを毎年一度は食べましょうというような努力規定条文(「参酌すべき型」)があってもいいのかもしれない。
多くの国での法体系は、憲法や法があるが、日本においては、憲法があり、それに法律があり、法律の範囲の中で各地方自治体が条例を地域の実情に応じて制定できるという仕組みになっている。他方、地域の実情に応じるものの法律や憲法を超えるような「しばり」を設けることはできるわけではなく、また、刑罰的なものを設置するにはハードルが高いことからも、罰則規定の無い、いわば”ゆるきゃら”のような条例(「参酌すべき型」)により条例のイノベーションの可能性をこの条例の改正に期待したい。
地域資源が枯渇・疲弊するなか、地方自治体は新たな資源発掘が求められており、地方議会の活性化にも寄与する可能性のある、いわゆる”ゆるふわ条例”(何の罰則もない、努力規定のみで、情報拡散性のあるコンテンツを含むもの(「参酌すべき型」))のについては、各自治体が5年に一本くらいは制定化してもよいのではないかと思われる。小笠原村の条例についても、活発に制定されているわけではなく、必要最低限の条例が制定されているのみであり、それでも行政機能に特段混乱はしていないと推察される。よって、このような超過疎自治体において、さきがけで(「参酌すべき型」)条例を制定するなど、この分野への参入障壁が低いとされることから、ウミガメ解体場条例の改定について、まずは積極的に検討してもよいのではないかと提案したい。
以上(約1,919文字)
<参考>
○小笠原村海亀解体場条例
昭和59年9月14日
条例第17号
(目的)
第1条 地場産業の育成に必要な施設として、小笠原村海亀解体場の設置及び使用に関し必要な事項を定める。
(名称、位置及び使用料)
第2条 海亀解体場(以下「解体場」という。)の名称、位置及び使用料は別表のとおりとする。ただし、村長は公益上特に必要と認めるときは、使用料を免除することができる。
(使用許可)
第3条 解体場を使用しようとする者は、小笠原村規則の定めるところにより申請し、村長の許可を受けなければならない。
(休業日)
第4条 解体場の休業日は、次のとおりとする。ただし、村長が特に必要と認めたときは、これを変更し、又は臨時に休業日を定めることができる。
(1) 日曜日
(2) 国民の祝日
(3) 1月2日及び同月3日
(4) 12月29日から同月31日まで
(使用時間)
第5条 解体場の使用時間は、午前9時から午後4時までとする。ただし、村長が特に必要と認めたときは、これを変更することができる。
(使用料の徴収)
第6条 解体場を使用しようとする者は、別表に定める使用料を前納しなければならない。
(使用料の不還付)
第7条 既納の使用料は還付しない。ただし、次の各号の一に該当するときは、その全部又は一部を還付することができる。
(1) 使用者の責任でない事由により使用できなくなつたとき。
(2) 使用開始前に使用申請を変更したとき。
(3) その他村長が特別の事由があると認めたとき。
(使用許可の取消)
第8条 村長は、次の各号の一に該当すると認めたときは、解体場の使用許可を取り消すことができる。
(1) この条例又は村長の指示に従わなかつたとき。
(2) 災害その他の事故等により解体場の使用に不都合が生じたとき。
(使用の原則)
第9条 解体場の使用に当たつては、すべて関係職員の指示に従わなければならない。
(賠償)
第10条 使用者は、使用に際し解体場及び附帯設備に損害を生ぜしめたときは村長が相当と認める額を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない理由があると認めたときは、村長は賠償額を減額又は免除することができる。
(委任)
第11条 この条例の施行について必要な事項は、小笠原村規則で定める。
附 則
この条例は、小笠原村規則で定める日から施行する。
附 則(昭和60年6月21日条例第13号)
この条例は、公布の日から施行する。
附 則(昭和61年7月1日条例第18号)
1 この条例は、公布の日から施行し、昭和61年4月1日から適用する。
2 改正後の条例の規定を適用する場合において、改正前の条例の規定に基づいて既に前納された使用料については、1頭につき1,500円を還付する。
附 則(平成4年3月16日条例第14号)
この条例は、平成4年4月1日から施行する。
附 則(平成10年3月26日条例第15号)
この条例は、平成10年6月1日から施行する。
附 則(平成26年3月24日条例第11号)
この条例は、平成26年4月1日から施行する。
別表
名称
位置
使用料
小笠原村海亀解体場
東京都小笠原村父島字屏風谷
1頭 2,700円
小笠原村海亀解体場条例
昭和59年9月14日 条例第17号
(平成26年4月1日施行)
· 条項目次
· 沿革
·
o 本則
§ 第1条(目的)
§ 第4条(休業日)
§ 第10条(賠償)
§ 第11条(委任)
o 附則
o 別表
[1] 小笠原名物ウミガメ!ウミガメの解体を見学してきた | リトタビ〜離島を旅する〜 (ritou.site)
[2] 小笠原のアオウミガメはなぜ減った?なぜ増えた? | 認定NPO法人エバーラステイング・ネイチャー (elna.or.jp)
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