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【ビジネスと経営】入門ガバナンスとは何か(その1)「パブリック・ガバナンスとコーポレート・ガバナンス」
コーポレート・ガバナンスの始まり
コーポレート・ガバナンスは、元祖のパブリック・ガバナンスと区別するため1930年頃に米国で生まれた造語です。
ビジネスパーソンがコーポレート・ガバナンスの理解を深めるためにはパブリック・ガバナンスの理解が近道になるので今回はパブリック・ガバナンスを簡単にご紹介します。
パブリック・ガバナンスは納税者の権利
たとえば日本と米国の若者二人が連れだって世界各地を旅行しているとします。日本から海外旅行中の日本人宛てに郵便物が送られるのは珍しいことではありません。一般に日本人旅行者宛の郵便物は次に訪れる予定国の日本大使館宛に送ります。
大使館には旅行者宛の郵便物が大量に届くため、大きめの段ボール箱に郵便物を無造作に入れて保管します。某国の大使館に到着した日本人旅行者は、段ボール箱の中から自分宛の郵便物を掘り出します。
一方で旅行中の米国人宛にも米国から郵便物が送られて来ます。海外旅行中の米国人も自分宛の郵便物を受け取るために米国大使館を訪れます。米国人宛の郵便物は探し出しやすいようにアルファベット別に仕切られた郵便局風のロッカーに整然と仕分けされていたそうです。
その様子を見ていた日本の旅行者が、なぜ米国の大使館は日本のそれよりもサービスが良いのかと問いますと米国人はこう言いました。「自分はペイヤー(納税者)だから当たり前だろ」と。
この話は20年以上前に世界旅行をしていた人から聞いたことなので現在どうなのか分かりませんが、米国人がペイヤーとして当然の権利だと述べた真意とはイコール国の主体はあくまでも国民にあり、国は納税者に最大限のサービスを提供すべきであるという考え方が根底にあることがよく分かります。
国民は納税を通して税金の運用を政府に委任している
欧米で主流のパブリック・ガバナンスのコンセプトには、国民は納税を通じて政府に税金の運用を委託しており、国家はその委託金をもとにして国を運営しているという大原則が存在します。
国に納めた税金は国民の大切な信託財産です。税金の運用を委託された政府はその財産の運用に重大な責任を負わなければなりません。そこで税金の運用に間違いがないようにするため預託金の使い方を国民の側から見通せるようにガラス張りにすること、そして国民が委託した財産を私物化されないように監視できるようにすることが重要です。
パブリック・ガバナンスには政策にも効果がある
政策の立案と実行でもパブリック・ガバナンスは効果があります。
わが国の政治家は国民が選挙で選んだ政策代理人です。政治家は国民からパブリック(公共)の運営を委託されている立場です。そこで国や地方行政などの要所要所をガラス張りにして、国民の側から監視できるようにすることもパブリック・ガバナンスの効果です。
いかなる場合であっても納税者を国の主体に置くことがパブリック・ガバナンスの原点です。
もしも納税した信託財産を政府が私物化して自分たちに有利なように利益を誘導すると、本来ならば長期的な視点で政策に投資しなければならない資金までもが目先の私利私欲で消え去り、国の財政はやがて枯渇することになります。パブリック・ガバナンスは国の経済の持続可能性にも大きな影響を与えます。
パブリック・ガバナンスからコーポレート・ガバナンスへ
ここで「株式会社」を考えてみます。株式会社では株主が出資し、出資した株主が株主総会で選出した取締役に経営を委任します。企業の経営権と所有権を分け、株主は企業の所有者とし、経営は委任した経営者に委ねるという構造です。
このことからも株主会社の主体は株主にあることが分かります。株主の立場からすれば経営を委任した取締役が過ちを犯さないように監視する仕組みが必要になります。この仕組みが「パブリック・ガバナンス」から派生した「コーポレート・ガバナンス」です。(次回に続く)