【ビジネスと経営】年初にグローバル経営を学ぶ「民間信仰と七福神」
七福神を巡礼しました
正月早々、谷中七福神(やなかしちふくじん)を巡礼しました。谷中七福神は、東京都台東区・荒川区・北区の7寺院に祀られている七福神で、およそ250年前に始まったと言われる江戸最古の七福神です。
七福神は、わが国の民間信仰の代表的な存在で多くの日本人にとって福の神であり幸福をもたらしてくれるものと信じられています。
七福神の顔ぶれは時代とともに変わりましたが、今では「恵比寿、大黒天、毘沙門天、弁財天、福禄寿、寿老人、布袋」を七福神の構成メンバーと呼びます。
七福神の信仰について
七福神の信仰は室町時代に始まったと考えられています。今でも日本各地で七福神参りが盛んなので息の長い民間宗教ともいえます。
七福神を信仰することにより手に入れることのできる七福を神道学者である三橋氏の著書(三橋健「日本人と福の神」)で参照すると「寿老人=寿命」「大黒天=有福」「福禄寿=人望」「恵比寿=清廉」「弁才天=愛敬」「毘沙門天=威光」「布袋和尚=大量」とあります。
三橋氏の著書を読んで思うことは、日本人の幸福論が金品、権力、名利を拠り所にする富貴傲慢(ふうきほうまん)とはおよそ縁遠いことではないでしょうか。七福神がもたらしてくれる七福とは儒教から影響を受けた日常の徳目を意味する道徳観と考えることもできるでしょう。
七福神が興味深い理由
七福神が興味深い理由は多国籍メンバーで構成されていることです。そのルーツとする宗教もさまざまです。
諸説紛々としているためここで断定はできませんが「インドからは大黒天、毘沙門天、弁才天」、「中国からは福禄寿、寿老人、布袋和尚」、「日本からは恵比寿」が発祥の地とされています。広範囲な地域の神々を一同に集めて崇めたというのは大変に面白い慣習です。
また、出身地や宗教上のルーツが異なるだけではなく、そのメンバーには中国で実在したと考えられている「布袋和尚」が人間界を代表して乗船していますし、女神の立場で弁才天も乗船しています。いうなれば、国籍、宗教、性別、人神の区別なく一隻の宝船に同舟させて道徳的な人間像を求め崇め奉る七福神の宗教観は、海外では例を見ない日本独自の画期的な文化だと考えても良いと思います。
外来思想や宗教を一方的に排撃して政治にまで影響を及ぼしている一部の世界情勢と宗教観とは異なる日本独特の七福神の思想感、すなわち【ジェンダー・フリー、非人種差別、ボーダーレス】を七福神を通じて世界に発信できる機会があればそうしてみたいと考える今日この頃です。
このように一隻の宝船に異質な神々を同乗させて福神を創り上げたわが国の庶民的な発想を知ることは、高度なバランスを足がかりとしてこそ成立するグローバル経営のコンセプトによく似合います。日本には欧米では考え難い独自の理念があることを誇りにしたいものです。