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好きか、得意か、燃えるような情熱か 『ISO通信』第89号

「数字に強い、という理由で経理が長くなりましたけど、特にやりたい仕事ではなかったのです。でも得意ではあるんです、経理は」
転職相談でAさんから聞いた言葉です。Aさんはキャリアチェンジすべきか、経理の仕事を続けるかで悩んでいました。

Aさんは新卒で自動車部品メーカーに入社し、経理部に配属されました。そして自分が経理に向いていることを自覚し、会社からは経理の中核人材になることを期待されている、と感じているそうです。
「経理は嫌いではないのですが、私は営業をやりたいと思って入社したのです。しかし、今の会社では経理部から出してもらえそうにありません」
Aさんの言葉に対して、私は以下のように答えました。
「今の会社で経理として高く評価されているのに、転職してしまうのはもったいないと思います。しかし『好きなことと得意なことのどちらを優先したらいいですか』と聞かれたら、私は、好きなことを優先して欲しいと思うタイプです。ただし、好きなだけでは年収は下がるかもしれません」
営業が好きだとしてもセンスがなければ、高い成果を上げることはできません。その場合、経理の仕事を続けた方が役職や等級を上げやすくなるので、年収にこだわるのなら、経理から離れることは得策ではありません。私はAさんに
「営業するとして、商材はどんなものを扱いたいのですか」
と聞いてみました。
「一般消費材が面白そうですが、自動車メーカーに対する営業の方がイメージはしやすいです」
「自動車部品に対する愛着はありますか」
「あるような、ないような。でも最終製品の営業の方が楽しそうな気がします」
そのあと私は、Aさんにいくつかの質問をしました。
・どんな商材の営業だったら、燃えるような気持ちになれそうですか。
・それとも漠然と営業してみたい感じですか。
・自分は経理が好きだ、と自己暗示をかけたら、本当に好きになる可能性はありますか。
そうして1時間ほど会話を続け、面談の最後にAさんは言いました。
「なんとなく見えてきました。今日はいい壁打ちができたので助かりました。ありがとうございます。転職ありきではなく、現職に残ることも含めてもう一度考えてみます」

しばらくしてAさんから
「もう少し今の会社に残って頑張ります。燃えるような気持ちになれるものが見つかるまで、真剣に経理と向き合ってみます」
と連絡がありました。転職相談は無料なので、Aさんとの会話で私が対価を得ることはありません。しかし、このような言葉をもらうとエージェントとしての価値を提供できたと感じて嬉しくなります。
得意なことに真剣に向き合い、燃えるような気持ちになれるのなら、それをキャリアの軸にすべきだと感じました。

好きなことや得意なことが見つからない人もいると思いますが、今の仕事と真剣に向き合ってみると、何かが変わるかもしれません。

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