キャリア採用における「年齢不問」の先進国は日本?『ISO通信』第88号
A:求人票には性別不問と書いてあるのに実際にはそうでない。
B:求人票には年齢不問と書いてあるのに実際にはそうでない。
法律の例外規定に沿っていなければ、どちらのケースもコンプライアンス上の問題があります。人事の担当者から「求人票には書いてありませんが、実際には男性希望です」などの発言を聞くことはほとんどなくなりました。管理職の比率や賃金格差などの面で、今でも性別による差異が発生していることは問題ですが、書類選考の段階で女性をNGとする企業はこの10年で大幅に減りました。感覚的なものですが、10年前は求人案件のうち30%くらいは「実は男性希望です」といった本音があったように記憶しています。しかし最近1~2年においては、そのような発言を聞いたことがありません。一方で、Bのケースに関しては「現実的には、60歳近い人では厳しいです」などの発言はまだ残っています。60歳定年の会社が、59歳であることを理由に書類選考を不合格とした場合、法律的にはアウトですが「他の候補者と比較して総合的に判断した結果、今回は見送りとさせて下さい」などと言われるケースはあります。そんなとき「もし年齢が理由なら、一度会ってみて下さい」とお願いしてもかつては再考してもらえませんでした。しかし「最近は会うだけ、会ってみましょう」という企業も増えて来ました。また「うちは65歳に定年を延長したので、60歳でもOKです。今回は年齢ではなく〇〇の理由で見送りました」と言われたこともあります。
私の経験としては65歳の人を紹介して入社につながったことがあります。先日、英国人の同僚と会話したところ「経営幹部のポジションに60歳以上の人を紹介しても、実際に採用してもらうことは難しい。日本の方が年齢に関するダイバーシティーは進んでいるのではないか」と言って、驚いていました。一人の英国人と私の会話だけで、日本の方が進んでいると断ずることはできないので、データを探してみました。しかし、60歳以上の人が新しい会社に経営幹部として迎えられる事例がどれくらいあるのかについて、統計資料を見つけることはできませんでした。
資料を探す途中で、米国企業のCEOの年齢ランキングが載っているサイトに出会いました。米国のビジネス誌「Fortune」が紹介しているサイトで、タイトルに「Meet Fortune 500’s most senior CEOs」とあります。(世界において総収益が多い500社の「Fortune Global 500」ではなく、米国企業の「Fortune 500」について調べた結果のようです。)
その記事によると、2021年度のFortune 500のCEOの平均年齢は57歳で、71歳以上の人が10人います。最高齢はバークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット氏で91歳(現在は93歳)。ランキングの年齢だけを見ると84歳、77歳、76歳と続きます。上位10名の全員が男性で、8名はCEO在任期間が15年以上でした。米国においても、長期政権を維持する高齢の女性経営者は、まだ現れていないようです。
データが見つからなかったので、主観に戻りますが私の周囲では50代、60代の転職事例は確実に増えています。30年以上務めた会社を卒業して軽やかに転職することが珍しくない時代になりそうです。
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