コーポレートガバナンスは一人ひとりの意識から『ISO通信』第87号
ジャニーズ事務の問題に関して、日本民間放送連盟の会長が「重大な人権侵害であるという認識をメディアが十分に持てなかったことは事実で、反省しなければならない」と述べたそうです。反省はしていると思いますが、今後も疑惑を追及するような行動を起こすことはかなり難しいと想像します。
ジャニーズ事務所に関する黒い噂は30年以上前からありました。そして他の芸能事務所に関しても同じような噂がありました。それは、デビューしたいと考えている女性に対して、芸能事務所の権力者が性的な害を加える前に、デビューしたいなら同意の上での行為であると認めなさい、と脅迫しているという噂です。この話はただの噂であって事実ではないのかもしれません。マスコミもスポンサー企業も、そのような噂を信じていないのだと思います。だから「過去の問題も含め、潔白を証明した事務所のタレントしか起用しません」と宣言するスポンサー企業やテレビ局は出てこないでしょう。そう考えると疑惑の段階でジャニーズ事務所を糾弾することは、かなり困難だったと思います。だからしょうがないことだよね、と言いたわけではありません。
内部通報の仕組みを、さらに整備すべきだと考えますが、内部通報した人に対する目が温かいとは限りません。たとえば、こんな場面を想像して下さい。あなたは採用面接の面接官で、となりには社長も座っています。面接を受けに来た人に「どうして転職を考えているのですか?」と質問したら「私が勤めている会社はコンプライアンス上の大きな問題を抱えていて、内部告発したら左遷されてしまいました。こんな会社に残るつもりはありません」との答えが返ってきました。そのときあなたは「この人を採用したら我が社もやばい」と思うでしょうか。あるいは「この人こそ採用すべきだ」と思うでしょうか。
ホワイトな企業であれば、内部告発した人の勇気をポジティブに評価するかもしれません。ブラックな企業なら不採用の結論を出すでしょう。
転職相談で「今、どうして転職を考えているのですか」と質問したとき「会社が不正を黙認していることに耐えられません」といった答えは、以前より減ってきました。コーポレートガバナンスに本気で取り組んでいる企業が増えていることが、不正の減少につながっているのでしょう。
マスコミの姿勢を批判したり、叱咤したりすることも大切ですが、自らの意識や行動を変えることで組織や社会が変わっていくのだと思います。
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