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決断したら実行に関しても責任を持とう 『ISO通信』第95号

11月初旬にシンガポールで開催されたトランサーチグループのアジアパシフィック会議に参加してきました。インド、オーストラリア、タイ、マレーシアなどのメンバーとイギリスに住んでいるグループCEOがシンガポールに集まり、ビジョンやノウハウを共有することが目的です。
2日間の会議で、リーダーシップのあり方について議論したり、ゲストスピーカーの講演を聞いたりしました。 シンガポール在住のゲストスピーカー(ベンチャーキャピタルファンドの経営者)は、若いうちはとにかく学び、ミドルエイジになったら決断と実行を繰り返すことが重要だと強調していました。決断したことを実行すれば成功することも失敗することもあるが、失敗から学ぶことでより大きな意思決定ができるようになる、と言っていました。
講演後の雑談で、インドの同僚から「インドに駐在している日本企業の社員は、自分で決断することが極端に少ない。なぜいつも本社の意向を確認する必要があるのか」と質問されました。
「インドの現地法人が単独で判断して失敗したとき、インド事業を統括している本社の役員も責任をとらされるからだろう」と私が説明すると「それでは意思決定が遅くなるし、インドにいる社員が決断して実行する経験もできない」と言われました。雑談はすぐに別な話題に移ったのですが「日本の企業は相変わらずだな」と思われてしまったような気もします。私としては「日本でも優秀な若手が起業する例は増えてきたし、買収した会社に30代や40代の社員を経営者として送り込む企業が増えてきた」と伝えたかったのですが、飛び交う英会話のスピードに割って入ることができませんでした。 
 
買収した会社に自社の中堅社員を送り込んで「経営」を経験させる企業が増えてきた一方で、買収された会社ではプロパー社員の不満が高まっているケースもあります。ある人との面談では
「〇〇社の子会社になってから、役員のほとんどが親会社からの出向社員になりました。その人たちは、成功すれば自分の手柄、失敗したらプロパー社員の責任みたいな顔をしているので、転職を考えるようになりました」
と聞きました。自分で行ったことの手柄を取り上げられてしまえば、誰でも面白くありません。決断と実行と評価はバランスよくリンクする必要があります。実行した人より決断した人が評価されることもあれば、決断した人より実行者が評価されることもあるでしょう。しかし、手柄は自分のものにして、失敗したときは実行者のせいにする人の下では働きたくありません。
 
シンガポールのゲストスピーカーは「決断したら実行にも責任を持つべきだ。『部下が指示した通りに動かなかった』『お金を出して外部の会社に頼んだが、思ったような結果にならなかった』と言い訳して、自分の指示のどこに問題があったのかを考えなければ、また次も失敗する」と言っていました。
 日本でもシンガポールでも、結果を出している人の思考や行動パターンは同じだと感じました。

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