掘削記 #2 「Kolokol」〜ミイラ取りがミイラ、モグラ叩きがモグラ~
厳しい冬の寒さも、地底に潜れば寒くない。
寒い寒いと嘆くのは、地底の温もりを知らない者だけなのであるー。
ーレイチェル・カーソン『沈黙の春』より
<序段>
どうも。私の名前はぴぃ高ちゃん。
いや、こちらでは「○○〇ちゃん」とか「○○〇(子)」と名乗った方が良いでしょうか。
2022年8月、ノリと勢いで目当ての2時間前に早乗りしたTIFの SKY STAGEを機に、アイドルという世界に7年ぶりに戻ってきてしまった者です。
さて、今回はタイトルの通り「掘削記」。
アイドルの現場に通うことを「穴掘り」「掘削」と呼んでいる僕によるちょっとした日記のようなものの頭につけていこうと思います。
<掘削>
・「なんか見たくなるもの」ってあるよねわかる
あまりにも久しぶりすぎて忘れていた。
アイドルには「ワンマンライブ」という概念が少ない、ということを。
だからこそ目当て以外のグループを観ちゃうのは割と仕方のないことではないだろうか、それが割と近い沼の進み方をしているオタクが落ちた沼ならば。ボブは訝しんだ。
……そんなことをボブくんに代弁してもらったが、これは簡潔に言ってしまえば「楽しそうにしてるオタクの行ってる場所って興味湧くよね~」ということである。
今までもそういうノリで生きてきて、周りのオタクの楽しそうな誘いに釣られて河口湖行きのバスをライブ前日に取ったり、鹿児島ー中部国際空港の往復航空券1週間前に予約したことのある人間の僕。楽しそうセンサーの敏感さには少しばかり自信があるのである。
そんな楽しそうセンサーの動きに釣られて観るようになったのが「Kolokol」というグループ。
実はアイドルを追いかける以前に名前を知っていた数少ないグループだった。え?主現場女性声優、Dからはじまるパステルカラー女性声優8人組の対バン相手でも無かったはずだったのにどうして?
その原因はあるひとりのオタクの「進化」だった。
なろう小説、
「人の家の冷蔵庫を凝視していた女性声優オタクが転生して知らない女性のチェキと飯の画像をあげるようになっていた件〜今更戻そうたって、もう遅い〜」
Twitterにて掲載開始ー。
他人をおもちゃにするのが当然の礼儀という、アイドルマスターという畑で育った僕にとって彼の進化は格好の的。
コレを逃さずにはいられないとばかりに@MakeItAQuoteJPを送りつけ、彼の発言を後世に残る魚拓としていた……
そんなことをしていたら8月を迎え、例の事件が起き、9月、10月とアイドル現場の慣らし保育と手元に残った女性声優現場のチケットの処理(←2度くらい号泣したクセにその言い方、良くないよ)を済ませ、11月。
対バン形式のイベントでついに「オタクが怪文書を送りつけている女性が存在するグループ」、Kolokolとの邂逅を果たすことになった。
・「コンセプト」があるっていいよね
ただこの日は色々とインパクトある出来事が多く……
各所のタイムテーブルで名前は知ってたけど観たことがないグループが大量に居て、それを満遍なく音楽評論家目線で見ていたのと、久しぶりに声を出せるライブということもあって、この日のド本命、トリのタイトル未定「鼓動」に全ての「感動」と名のつく感情を奪い取られ、全体的に感想は薄口。
ただ、薄口と言ってもその表現は「無」という意味ではなく、どちらかと言うと醤油とか家系ラーメンの薄口に近い、しっかりとした味わいがはじめて浴びるKolokolの音にあった。
特にこの日の4曲目。
後に「ぴぃ高ちゃん's 今年の10曲」に名を連ねることになる「Deeper Deeper」という曲は浅く薄く広がったこの日全体の感想の中に色濃い印象を残していった。
と、いう話をこの日一日過ごしていたオタク(険しいリプライをしていた上のオタクでは無い、けれど今では険しいリプライをするようになってしまった悲しき生き物)にしていたらふと思い出したのが、彼の沼へのハマり方。
そういや初心者向けnoteみたいなのをメンバーが書いているって言ってたな……?
その日の夜。
読んだ。面白い。何コレ。
アイドルのnoteという「当事者によって投下される爆弾の危険性」をはてなブログというかつての戦場に叫んだのが確か10月31日。
その日から片手の指で数えられるかどうかの日にちで見事に爆弾をもうひとつ拾いあげてしまったってワケ……
そんな文章を読んだ翌日。この日は久しぶりに休日出勤。いつもより少し早めに目が覚めた僕の天才的思考は朝6時に花開く。
2時間早く仕事に行けば、今日も推しちゃんに会えちゃうし、あのnoteを読んだあとのKolokolも観れるのでは……?
♪デデデデデデデ……(脳内BGM:福山雅治「VS.〜知覚と快楽の螺旋」)
そう決断してからのスピードと行動力は恐ろしいものであった。
警備員すら出勤していない時間に職場に到着して警備会社の鍵開けを待ち、誰もいないフロアで全員分の作業を6割片付けたのが始業5分前。
定時の2時間前に颯爽と退勤し、手首にリストバンドを巻き付け、コークハイ片手に2段目の柵に手をかけていた。
そんなこの日のライブ。
お目当てのもののとある異変というか、予兆を感じ取り、その予兆が翌日に的中して気落ちした一日でもあったけれど、それを抜きにしても再び浴びた「Deeper Deeper」の見え方はこの日の2日前の、初見のものとは全く違ったものだった。
↓以下この日のあとに書いたメモの原文まま
なにこのRPGのボス戦手前の闇落ちした仲間と戦うときに流したら最強になりそうな曲。この曲を聴いて何度でも無敵になりてえ。
↑「あの曲をかけて無敵になりたい」ってめちゃオタクっぽくて汎用性に優れたフレーズですよね。「主題歌」大好きです
……というのは置いといて(いや、置いときたくないけど!)。
一晩にしてここまで曲が"化ける"感覚を得たのは間違いなくあのnoteで語られていた「徹底して守られている世界観」という前提条件を植え付けられたから。そして僕のバックグラウンドに「コンセプト」を意識した作品づくり「しか」やらない変た…アーティスト(何度擦るねん、と思うかもしれないがお察しの通りBase Ball Bear)があるから。
前情報無しで浴びた音を、即座にそのグループのコンセプト、世界観を加えてアップデートできたこの気持ち良さ。「オタクが通ってて面白そう」は「このグループ来るし現場行くか」というモチベーションに変化していった。
・近づいてみないとわからないことってあるし、「癖」ってものには逆らえないよね
と、言いながらそこから1ヶ月。
物理的に行ける機会が無かったのと、先述の「予兆」とか、2次元のオタクとしての宿題を拾いに行くためのコンテンツライブとか、とにかくメンタルを虐める出来事があったのとで、アイドルの現場はひと休み(と言いつつ、とある現場に行ったのですが……そこは#3で。)。
そんなお休み期間を経て1ヶ月ぶりに参加したライブで、モチベーションは「グループ」から「個人」に範囲を広げる(狭まってね?と思ったけど視点が増えた、という意味では広がってるのでこういう表現で良いんじゃね?)ことになる。
むげんのチケット
みなみのことうとくてんかいへ いくときに ひつような ふねなぞの チケット。しまぐるーぷの えが かかれている。
や、この件に関して言い訳をさせてほしい。
この日までちゃんと気持ちはフラットだった。四者四様の歌い方が魅力だという通りメンバーそれぞれに対する感想もちゃんと持ってるんですよ。ただ特典会に関してはこのグループには優秀な狂い方をしている上の2名を眺めておいて、女性に狂った面白いリプライやらツイートの魚拓を取っておけば良いかな〜って……
「そろそろ誰か行こうよ」とかいう悪魔の囁きをしてくるオタクがぜんぶ悪い。僕は悪くない。「ノリで1500円くらい全然出せるわ!w行く!」とか言ってない。僕は悪くないんだ……
言い訳終わり。
今からギロチン台に立ちます。
まぁフラットだった、というのは本心。
この日特典会に行くことは決めつつも誰に行くかはギリギリまで決めていなかったので。
まぁオタク2人の推し(片方は推しとは頑なに認めようとしていない、が。)に「いつも魚拓取ってごめんなさい……」と謝りに行くのがエンタメ的には面白い、と思っていた。(心のNTRは嫌いだけど)面白いことは大好きなので。
とか言ってたらこの日、ブッ刺された。
「癖」という「第3の選択肢」に。
その場に居合わせたオタクも、夜に再会したもうひとりのオタクも「誰行ったん?」と尋ねては目を丸くした第3の選択肢。それが高橋あきほさん。
歌い方と、ハードな曲の合間合間で、ステージ上でフッと目元口元が緩む感じ。
ステージの上の自分に対しての自信を感じさせる表情に、気付けばギュッと吸い込まれてしまった。
隣に居たオタクから進化アイテムと言わんばかりに手渡された変色式のペンライト。その変色機能がぶっ壊れてピンク一色から変わらなかったのは、思いかえすと盛大なフラグだったのかもしれない。この日最後の「Bonfire」のときには完全にペンライトをぶん回す感覚、楽しさを古の記憶から掘り起こしきっていた。
・「鉄は熱いうちに打て」、って言いますし
「このグループ来るし現場行くか」の次の段階は、「次もあるなら行くか……」。
ライブスケジュールを覗くと、次の東京でのライブは12月24日。世間はクリスマスイブ。この日の13時ごろからとあるイベントが予定されていたので、そこに被りさえしなければ……
~イナズマイレブン今日の格言~
「立てたフラグは大体的中する」
イベント開始時刻とKolokolのタイムテーブルが皮肉のようにガッツリ被る、という事態。
九段下の坂ダッシュから道玄坂の坂ダッシュというオタク箱根駅伝計画をいったん凍結し、究極の2択を突き付けられた僕の選択はいかにー。
(いや、それ駅伝じゃなくて、ウマや……)
【実績解除】
・割とずっと推している女性声優のイベントを干す
・アイドル現場に通うキッカケとなったグループが出ない対バンのチケットを取る
経験値のオーバーフローにより、もぐら、一気にレベルアップー。
「手の届く範囲なら、いちばん楽しめそうな場所に行く」
そう決めているのでこの選択は僕にとって自然だけど、その選択肢が増えたという点に関しては自然じゃない。こういう不思議な感覚は今年何度か味わったけど、味わうたびに「悪くないな」と思ってしまう。
この日の本命は的中しなかったけれど、穴馬の「ストロベリーパイ」を的中させたー「Strawberry Pie」のイントロが流れたー瞬間、横に並んだオタク二人を差し置いて飛び上がり、ピンク色の棒を振り回すくらいには「楽しい」。
そう思える場所が気づいたら増えていた、というお話。
聖なる夜、サンタクロースは靴下の中にプレゼントをしっかり用意してくれたようだった。
<余談>
↑ いや真ん中、なに書いてるんですか……???
まぁこの日3回回った僕が言えたクチじゃないんですが……
「推し」というものは自らの心の葛藤と向き合って斬魄刀との対話と同調を済ませ、精神世界にいる斬魄刀本体との「具象化と屈服」の果てに得られるものであって
まぁ良いでしょう。
ピンク色の斬魄刀棒を振るのも久々で楽しいと思ってきた頃合いだし。
(この頃はまだ、この発言が、一か月と持たない、短い誓いになることを誰も知る由もなかったのであった……あまりにも壮大な伏線に全米が涙に包まれた……)
このグループ、SNS上手すぎて怖い。とある女性曰く「だいぶTwitterの世界で戦ってきた人間」の僕でも油断したら刺されかねないサーチ力がある。もう傷だらけに見えるって?そう……
周りのオタクと同じ話題で楽しめるグループ、ってのも良いなと思う。彼らが居なかったら引きずりこまれていないわけだし。互いのリプライや反応が見えてしまっておもちゃにしたりされたりのバトルが発生するのが玉に瑕だけど。
いつかホームでも見てみたいですね。関西はノリで行った経験アリ(うっ……頭痛が……)だからフッ軽発動しやすいし。
おわり、ほな……