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ニューヨーク駐在記録「慣れない現地校」

学校とのやりとりは、メールやアプリが主だった。学校からは逐一アプリに子供達の写真が送られてきた。息子の様子が確認できるのはとてもありがたかった。でも、どの写真もぎこちない笑顔に変わりはなかった。
息子はクラスで唯一アジア人の男の子かつ、英語を話せない。現地校に通うまでに、英語のアニメを見て親しみを持たせたり、オンライン英会話をさせたり、家ではアルファベットを書く練習をさせていたけど、それがどれだけ役に立ったかわからない。
息子は先生とコミュニケーションを取れているのか。クラスメイトと遊べているだろうか。5分休憩がないのにトイレに行かれているだろうか。日本のお弁当を持って行って、まわりからバカにされていないだろうか。
とにかく、心配が尽きなかった。

さらに、自分自身、息子が現地校に通うことでストレスを感じていた。英語が苦手な上に、アメリカの現地校がどんなものなのかわからない。学校からのお便りを読んでも、それがなんのことだかわからない。お知らせの重要度もわからない。漏れがあっては息子が困る。不明なことは、その都度調べたり、先生に直接確認したり、シッターさんに聞いたりする日々。

私たちは学校が終わると、逃げるようにその場を後にした。そのまま家に帰ることがほとんどだったけど、わざわざ学校から遠く離れたセントラルパークまで足をのばすこともあった。

そんな10月のある日のことだった。
「遠足の時、(息子が)一人でお弁当食べてたよ」
そう教えてくれたのは同じ学校に通う、他のクラスの日本人ママだった。その日、息子はリンゴ狩りの遠足があった。アメリカでは遠足に付き添いで親にボランティアを募ることは普通のことで、彼女はボランティアとして遠足に行ったようだ。自分も行きたかったけど下の子を連れて参加できないし、夫も忙しくて断念したのだった。
私はその話を聞いて「え、本当?」としか言えなかった。
先生から送られてきた写真では、お弁当を食べている場面はなかったし、実際に自分が見たわけではない。たしかに、息子の写真はどれも笑っていないし、他の子供達が友達同士でじゃれあっている写真があるのに、うちの息子には一枚もなかった。でも、クラスで一人だけってことある?先生はどうしてたの?
何より、それを事実として認めたくなかった。
私は真相を知りたかったけど、息子に直接その話はできない。
だから私は「外で食べたお弁当はどうだった?」と聞いてみた。
すると息子はちょっと笑いながら「お弁当のときにね、蜂が飛んできて、みんなでワーワー騒いで大変だったんだよ」と話してくれた。
これだけではちっともわからなかったけど、夫とこの件を共有して、ひとまず様子を見ることにした。


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石森のぶ
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