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思索するひと。言葉やもの、道具、作ること、生活していくことに興味を持っています。 instagram→https://www.instagram.com/nemurenainodesu/

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  • ことばのこと

    考えすぎと言われるわたしが、 言葉を使って日々思いめぐらせていること。

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    私の手元にやってきたもの。 タイトルは河井寛次郎の言葉。

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    「つくる」ということを考えます。

記事一覧

火曜サスペンスで計る日常

なにが日常で、なにが非日常か。 簡単な言葉で言ってしまうと、いま、多くの人の価値観が揺り動かされているんだと思う。 以前の記事でわたしはこう書いた。 スーパーマ…

憂
4年前
4

メッセージの送信を取り消しました

画面にタイプされ、送信された言葉は、相手の目に触れるまえに簡単に取り消せる世の中になった。 何が言いたかったの? 何を考えていたの? この一分一秒にどんな心の動き…

憂
4年前
4

10【レインシューズ】

基本的にどこに行くにでも、革靴を愛用している。 定期的に汚れを落として、磨いて、メンテナンスして・・・という工程も含め、革靴が好きだ。 ハタチそこそこの頃、何も…

憂
5年前
4

いつものスーパーマーケット

休日だというのに体力的にも精神的にもひどく憔悴しきった日があった。 さっさと家に帰ればいいのだけれど、それも違った。 家に帰って一人になったら、膝を抱えててそのま…

憂
5年前
9

途方もない
飢えと枯渇を感じています。

わたしはただ、
恋をしています。

#恋 #思索 #言葉

憂
5年前
2

9【円相の酒杯】

五条坂の陶器祭りに行った。 全国的に見ても有名な陶器市なんじゃないだろうか。 出店者のラインナップもバラエティに富んでいるというか、 やや混沌の様相を呈していると…

憂
5年前
3

生活。暮らしのそばにある道具は密やかでいい。自分のために、自分の心が満ち足りるかどうか、自分の心が慰められるか、それだけでいい。身にまとう洋服とは違う。社会性なんて要らないんだよ。

憂
5年前
1

隕石

7月最後の朝 ”地球に隕石が衝突するとしたら” 朝のワイドショーではにぎやかにそんな話をしている 隕石は◯時間前に観測されて ◯時間後には日本の東京が落ちることが発…

憂
5年前
1

献花

地下鉄に乗ってなんとなくぼんやりと座ってたら、 突然頭の真上に水がポツンと落ちてきた。 冷たかった。 何が起こったか一瞬わからなくて、服に飛び散った水滴を見て、瞬…

憂
5年前
2

わたしがものを買うわけ

三姉妹の真ん中、姉とは年子。 10歳以上年齢の離れた従兄弟や親戚が、近所に住んでいた。 当然のように幼いわたしにはたくさんのお下がりが与えられた。 お姉ちゃんとお…

憂
5年前
4

8【白化粧灰釉湯のみ】

なんどもなんどもモノは見たことがあったのだけれど、初めて手元にやってきた尾形アツシさんの灰釉湯のみ。 鉄分の多い土に白化粧、灰釉が黄色とも萌黄とも言えない色合…

憂
5年前
3

今晩は
群青色の折り紙になって
几帳面な誰かに
きちんと
小さく小さく折り畳まれたい

角を合わせて真っすぐな線を引いて
指で何度も何度もなぞって

深い深い
昏い


悲しいほど真っすぐに線を引いて

憂
5年前

6月は蝕まれていった。
じわじわじわ。
頭の中で一匹の蝉が脳幹につかまって鳴いている。
じわじわじわ。

憂
5年前

7+ 番外編【シチズン ホーマー】

以前書いたnoteの下にくっつけていた文章が、 読み返すとけっこう好きだったので別記事でアップし直します。 *-----* 文字通り、愛用している腕時計がある。 シチズンの…

憂
5年前
2

7【シチズン Q&Q フォルコン】

腕時計を探していた。 数年前からメインで使っているシチズンの手巻き時計に不具合があり、 修理の間だけ必要になってしまった。 腕時計は、そのメイン以外を使うとい…

憂
5年前
5

つくる考3 粘土、ハンパないって

そのむかし、陶芸教室のアシスタントをした。 地域で開催される子供向けの教室。 蝉がジリジリと夏を謳歌する暑い季節だった。 タイミング的にも、夏休みの自由工作にうっ…

憂
5年前
4
火曜サスペンスで計る日常

火曜サスペンスで計る日常

なにが日常で、なにが非日常か。

簡単な言葉で言ってしまうと、いま、多くの人の価値観が揺り動かされているんだと思う。
以前の記事でわたしはこう書いた。

スーパーマーケットという場所は、
わたしの食や暮らしと直結している場所であり、
わたしの日常があり、
わたしの社会性があり、
わたしの物差しがある場所なのである。

今はそんな場所にも行きにくくなってしまった。
わたしにとってのスーパーマーケット

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メッセージの送信を取り消しました

メッセージの送信を取り消しました

画面にタイプされ、送信された言葉は、相手の目に触れるまえに簡単に取り消せる世の中になった。
何が言いたかったの?
何を考えていたの?
この一分一秒にどんな心の動きがあったんだろう。
もはや知る由もない。

-----

朝に目が覚めて、眺める携帯電話には通知バッヂが光っていた。
そこにはキミからの、切とした言葉。
深夜の不安や、戸惑いや、孤独が、
短く綴られている。

「急にこんな話ですみませ

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10【レインシューズ】

10【レインシューズ】

基本的にどこに行くにでも、革靴を愛用している。
定期的に汚れを落として、磨いて、メンテナンスして・・・という工程も含め、革靴が好きだ。

ハタチそこそこの頃、何も考えずに革靴を履いて出かけ、大雨で水没させた。
今の自分なら、思い出して青くなるような事案だけれど、その時はレザークラフトを生業とする知人にひどく呆れられた。
当時住んでいたのが 雨の街・金沢 ということもあり、私は真剣にレインシューズ

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いつものスーパーマーケット

いつものスーパーマーケット

休日だというのに体力的にも精神的にもひどく憔悴しきった日があった。
さっさと家に帰ればいいのだけれど、それも違った。
家に帰って一人になったら、膝を抱えててそのまま暗闇に紛れ込み、二度と戻って来られなくなる気がした。
家はシェルターであり、家はひとりぼっちだ。

ふらふらと、ぼんやりと街を歩く。
頭が回らない、何も考えられない。
どこに行けばいいのだろう。

*-----*

するとどうだろう。

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途方もない
飢えと枯渇を感じています。

わたしはただ、
恋をしています。

#恋 #思索 #言葉

9【円相の酒杯】

9【円相の酒杯】

五条坂の陶器祭りに行った。
全国的に見ても有名な陶器市なんじゃないだろうか。

出店者のラインナップもバラエティに富んでいるというか、
やや混沌の様相を呈していると言っていいほど懐が大きい。
昨今の、微に入り細に入り作り込まれたクラフトフェアなんかとはだいぶ違う。

酷暑の京都、庇も街路樹もない五条通にずらりと並ぶテント。
昨年も訪れたけれど、歩くだけでサバイバルだ。
ひとつひとつ見ている余裕はな

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生活。暮らしのそばにある道具は密やかでいい。自分のために、自分の心が満ち足りるかどうか、自分の心が慰められるか、それだけでいい。身にまとう洋服とは違う。社会性なんて要らないんだよ。

隕石

隕石

7月最後の朝
”地球に隕石が衝突するとしたら”
朝のワイドショーではにぎやかにそんな話をしている
隕石は◯時間前に観測されて
◯時間後には日本の東京が落ちることが発覚して
途中から観たせいでわからないけどたぶんそんな話。

わたしはシリアルをほおばりながら考える
◯時間後に京都に隕石が落ちるとなったらわたしはどうするだろう
職場にいる確率が高いんじゃないかな
そしたらたぶん、東京の本社の指示を仰ぐ

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献花

献花

地下鉄に乗ってなんとなくぼんやりと座ってたら、
突然頭の真上に水がポツンと落ちてきた。
冷たかった。
何が起こったか一瞬わからなくて、服に飛び散った水滴を見て、瞬時に涙だと思った。
どこかの誰かの涙だ、と思って目を見張った。

今日も酷暑の京都では、
地下鉄はとても冷房が効いていて外とは大違いだし
結露した水滴がたまたま落ちてきただけなんだと思う。

偶然、いまこのタイミングで、そうなってしま

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わたしがものを買うわけ

わたしがものを買うわけ

三姉妹の真ん中、姉とは年子。
10歳以上年齢の離れた従兄弟や親戚が、近所に住んでいた。
当然のように幼いわたしにはたくさんのお下がりが与えられた。
お姉ちゃんとお揃いの可愛いお洋服、
おままごとセット、リカちゃん人形、
どこかパーツがない親戚のおもちゃ、
ゲームセンターでとったキャラクターのぬいぐるみ。
みんな良かれと思って与えてくれた。

自分で選んだ記憶はほとんどない。

誰かからもらったケー

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8【白化粧灰釉湯のみ】

8【白化粧灰釉湯のみ】



なんどもなんどもモノは見たことがあったのだけれど、初めて手元にやってきた尾形アツシさんの灰釉湯のみ。

鉄分の多い土に白化粧、灰釉が黄色とも萌黄とも言えない色合いを出している。
口元には石爆ぜ。

尾形さんの器には、一目見てそれとわかるような強烈な個性がない。
実直な工程で生まれるうつわは自分自身が意識を蔑ろにしていると素通りしてしまうタイプのそれだ。
けれど、一旦惹きつけられると強い。
フォ

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今晩は
群青色の折り紙になって
几帳面な誰かに
きちんと
小さく小さく折り畳まれたい

角を合わせて真っすぐな線を引いて
指で何度も何度もなぞって

深い深い
昏い


悲しいほど真っすぐに線を引いて

6月は蝕まれていった。
じわじわじわ。
頭の中で一匹の蝉が脳幹につかまって鳴いている。
じわじわじわ。

7+ 番外編【シチズン ホーマー】

7+ 番外編【シチズン ホーマー】

以前書いたnoteの下にくっつけていた文章が、
読み返すとけっこう好きだったので別記事でアップし直します。

*-----*

文字通り、愛用している腕時計がある。
シチズンのホーマー。
旧国鉄時代に駅員さんに貸与されていた手巻きの腕時計。
本体裏側には、年号や使われていた駅名が刻印されている。

※ただいま修理中につき、良い写真がないのが残念。

大きな文字盤と、視認性の高い数字。
針と12個の

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7【シチズン Q&Q フォルコン】

7【シチズン Q&Q フォルコン】

腕時計を探していた。

数年前からメインで使っているシチズンの手巻き時計に不具合があり、
修理の間だけ必要になってしまった。

腕時計は、そのメイン以外を使うということを考えていなかったので焦った。
代機はできる限り手頃な値段ですませたい。
かといって、ホームセンターのサービスカウンター前で売っているものを買うのもテンションが上がらない。
さてどうしたものか。
あ、一つ候補があった。

”チー

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つくる考3 粘土、ハンパないって

つくる考3 粘土、ハンパないって

そのむかし、陶芸教室のアシスタントをした。

地域で開催される子供向けの教室。
蝉がジリジリと夏を謳歌する暑い季節だった。
タイミング的にも、夏休みの自由工作にうってつけで数名の小学生が参加していた。

陶芸教室と言っても、ろくろをくるくると回転させてうつわ形を作るようなものではない。
こちらであらかじめ型やスタンプを用意しておき、それを自由に使ってもらいながら粘土で好きなものを作ってもらう。

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