樋口一葉作「たけくらべ」(1896)感想

樋口一葉(1872~1896)作「たけくらべ」(1896)
2022.9.13記  石野夏実 
 
 年一度の「文学散歩」が樋口一葉の本郷と台東区竜泉寺町に決まり9月18日の午後からの散策となった。
集合場所は三田線(私は新宿経由で大江戸線)春日駅である。
事前に「たけくらべ」を読むようにとの指示があり、Aさんから本日ライン「読んでますか」が入り「まだなの」と返事。
読まないわけにはいかないのでkindleで落としてあった青空文庫版を早速読んでみた。
あの長々と切れ目のない文語調は苦手で、何度も読みかけては読まなくてもいいかと放置していたのが実情だった。
読みにくさを何とか乗り越え3~4ページきたところで、この文体にも慣れ始め、午後のティータイムがすんだ3時半ごろから集中して読み始めた。
短編なので1時間と少しで読めたのではないだろうか。

当て字も多く、読み辛さもあったが美少女ながら口八丁手八丁の美登利を中心に、彼女を取り巻く少年たちとの交流(喧嘩も含め)が特殊な美登利の置かれた立ち場にもかかわらず、生き生きと書けていた。
お寺の息子信如への見かけの反感とは別に、互いに対する胸の内は別物で、淡い初恋が見事に描かれていた。
何も言わずに通じる心は、それ以上の発展が見込めないものであるほど、いつの時代にも切ないものである。
姉と同じく大黒屋の一番の遊女花魁になっていく定めの美登利は、この先どの様に生きていくのであろう。
「たけくらべ」の続編はあるのであろうか。

※鴎外と漱石にも絶賛され、ふたりとそれぞれに縁があった一葉であった。
一葉の写真を見ると、きりりとしていて男顔である。
若いのに着物や髷も地味であった。金銭的な余裕がなかったのであろう。
24歳で末期の肺病で亡くなったが、あまりにも早い死であった。
94年12月から96年2月「うらむらさき」まで、11作品を一気に書き上げ、それは"奇跡の14か月”とよばれた。
なお「うらむらさき」はkindleで読み始めたが、すぐに(未定稿)の文字。
これが未完の遺作であった。


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