石野夏実

2024年3月末に文学の同人誌と分科会である映画の会を卒業退会。 読書会や推薦映画の輪番制当番で書いた文章を整理し、残しておきたいと思いnoteに参加しました。ゆっくり時系列でUPしていこうと思います。韓ドラなどの感想も混ぜながら。 1949年生まれ。まだ仕事をしています。

石野夏実

2024年3月末に文学の同人誌と分科会である映画の会を卒業退会。 読書会や推薦映画の輪番制当番で書いた文章を整理し、残しておきたいと思いnoteに参加しました。ゆっくり時系列でUPしていこうと思います。韓ドラなどの感想も混ぜながら。 1949年生まれ。まだ仕事をしています。

最近の記事

瀬々敬久監督「糸」(2020年8月公開)

    「糸」を観ての感想                  2020.8.27  石野夏実              ※コロナ時代の4年以上も前の感想です。   先週封切されたばかりで、週初もまだ凄まじい頻度で予告編のCMが流れていた、大当たりが大前提の大衆娯楽映画。 菅田将暉と小松菜奈のW主演「糸」である。 ジャンルで分けるとしたら、ヒット曲映画化作品であろうか。ナレーターも語っている。中島みゆきの名曲が織りなす壮大なドラマ「糸」と。 これは、かって観た「涙そうそう」「ハ

    • 成島出監督「銀河鉄道の父」(2023)

      2023.5.5公開 成島出監督作品「銀河鉄道の父」感想                2023.5.11  石野夏実    GW後半に公開された直木賞受賞作が原作の「銀河鉄道の父」を近所のシネコンに観に行った。宮沢賢治モノが映画化されるのは、賢治の作品に興味を持つ者としては嬉しいことなので、ぜひとも観に行きたいと思っていた。   12時から約2時間の上映時間であったが、平日の昼間という時間帯のため、観客は少なくはないものの高齢者がほとんどであった。 エログロナンセンス軽薄が

      • 白石和彌監督「ひとよ」(2019年)

         白石和彌監督「ひとよ」(2019年11月公開)感想               2021.7.12  石野夏実     8月例会課題作「禁じられた遊び」の感想を書いていたら、確かめたい個所が出てきたので、プライムビデオを見直そうとHPを立ち上げたら目新しい作品が目に入った。 それは、もうひとつの課題作「彼女がその名を知らない鳥たち」(2017年公開)の監督、白石和彌の19年作品「ひとよ」であった。  タイトルはひらがなで「ひとよ」。 「人よ」かと思った。ところが小さな字で「

        • 是枝裕和監督「怪物」(2023年)

              2023年6月公開是枝裕和監督「怪物」感想                2023.6.8 石野夏実    カンヌ映画祭の脚本賞をTVドラマ脚本家で有名な坂元裕二氏が映画「怪物」で受賞というニュースが流れたのが、少し前。 前評判の高かった作品賞も監督賞も俳優たちの受賞もなかった。 主役の少年ふたり、母親役の安藤サクラと担任役の永山瑛太は最高のキャスティングであった。 賞レースの話題などは、映画の宣伝には一番効果的なのであろう。タイムリーな公開スケジュールであると思う。

          西川美和監督「すばらしき世界」(2021年)

            2021年2月11日公開「すばらしき世界」感想                2021. 2.25 石野夏実    16年の「永い言い訳」以来、久しぶりの西川美和監督作品、主演は役所広司。どうやら元やくざの話らしい。どんな設定、筋書なのだろうと、とても期待して観に行った。 マスコミにも取り上げられ、日に日に評判が高まっていたので、平日の午前中ではあったが、観客席はかなり埋まっていた。 前科10犯で旭川刑務所を刑期13年で満期出所する主人公を役所広司が熱演じている。元やく

          西川美和監督「すばらしき世界」(2021年)

          松永大司監督「エゴイスト」(2023年公開)

          旅行先の大阪梅田のシネ・リーブルで観た「エゴイスト」感想               2023.3.8記   石野夏実   監督と脚本は松永大司で俳優出身の48歳。すでに話題作を何本か撮っている。「恋人たち」の橋口亮輔監督(ゲイを公言)の映画にも出演し、また同監督の2作品の助監督も。 原作は高山真の同名自伝小説。高山氏の死後に映画化され、この原作は文庫本にもなり、現在映画のヒットと反響も大きく重版中。 この映画は、元女性誌編集者でエッセイストの高山真氏と、その高山氏の急死した

          松永大司監督「エゴイスト」(2023年公開)

          是枝裕和監督「真実」日仏共同制作作品(2019年10月公開)

                       2019年11月4日 記   石野夏実              2024年11月16日追記   昨年(2018年)公開された是枝監督の「万引き家族」は、数多くの国内外の映画賞を受賞しカンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)をも受賞。 氏は、過去の数々の作品も多くの賞を受賞し21世紀の日本映画を代表する監督となっている。 その是枝監督の最新作が、日仏共同制作作品「真実」である。 この映画は、昨年秋にパリで撮影され先月公開された。撮影期間は10月4日

          是枝裕和監督「真実」日仏共同制作作品(2019年10月公開)

          橋口亮輔監督「恋人たち」(2015年)

                                                 2021年4月29日   石野夏実    先日、橋口亮輔監督の2015年公開作品「恋人たち」を観た(プライム+松竹ch) この頃、Akeboshi(明星)という名のシンガーソングライターの楽曲がとても好きになり、彼がこの映画に提供している耳障りの良い「Usual life」が特に気に入り、一度映画を観てみようと思ったのである。滅多にないことであるが、今回の私は、音楽から映画に向かった。 橋口監督の

          橋口亮輔監督「恋人たち」(2015年)

          アメリカ映画「チョコレートドーナツ」(2012年アメリカ公開、2014年日本公開)

                        2020.8.21記  石野夏実     これは、1979年のカリフォルニアが舞台で、ゲイのカップルの恋愛とダウン症の少年マルコとの愛、ふたつの愛を描いているアメリカ映画です。 実話に基づくこの映画の製作&公開は2012年、日本での公開はその2年後。日本の題名は「チョコレートドーナツ」で原題は「Any Day Now」。「すぐにでも」くらいの意味でしょうか。チョコレートドーナツは、マルコの大好物。もっと深い意味があるのかもしれませんが、原題の方が

          アメリカ映画「チョコレートドーナツ」(2012年アメリカ公開、2014年日本公開)

          ウォン・カーウァイの香港映画⑫「グランド・マスター」(2013年)

                           2023年8月  石野夏実   この映画が監督の最新作であるが、公開は今〈23年〉から10年前である。いまだ新作映画の話は聞こえてこない。    さてこの映画はカンフーの一代宗師(いちだいそうし)イップ・マン(=葉問)の伝記映画なのであるが、もちろん単なる偉人記録映画ではない。 主演はイップ・マンにトニー・レオン、共演はゴン・ルオメイ役のチャン・ツィイー。 監督作品でのふたりの共演は「2046」(04年)以来である。 ウォン・カーウァイの作品

          ウォン・カーウァイの香港映画⑫「グランド・マスター」(2013年)

          ウォン・カーウァイの香港映画⑪「マイ・ブルーベリー・ナイツ」(2007)

                            2023年8月  石野夏実   監督の初の英語作品が2007年に公開された。監督名を伏せてこの映画を観たら感想はどうなんだろうと考えると評価は5段階の4前後で落ち着くのではないだろうか。話に無理はないし全体としてストーリーもまとまっている。映像も凝っているのにそれを悟らせない自然さがある。 しかし、これほど豪華にスターたちを使わなくても無名の俳優たちで成り立つこともできる内容の映画ではないだろうかと思った。そうすると監督がウォン・カーウァイ

          ウォン・カーウァイの香港映画⑪「マイ・ブルーベリー・ナイツ」(2007)

          ウォン・カーウァイの香港映画⑩「若き仕立て屋の恋」(2004年)ロングバージョン

                2023年8月  石野夏実    香港、アメリカ、イタリア合作の3監督オムニバス・ドラマ映画を中編ロングバージョンに仕上げたものである。 高級娼婦と若い仕立て屋の恋の話であるが、主演はコン・リーとチャン・チェン。 高級娼婦(コン・リー)はチャイナドレスを仕立て屋に頼んでいる。 ある日見習いの若い男(チャン・チェン)が娼婦の部屋を訪ねた。 これが最初の出会いである。 娼婦なのでエロい。若い男は無口で顔にも出さず、ひたすら娼婦を慕い続けるようになるが、本人たち以外は

          ウォン・カーウァイの香港映画⑩「若き仕立て屋の恋」(2004年)ロングバージョン

          ウォン・カーウァイの香港映画⑨「2046」(2004年)

             2023年8月  石野夏実   先ずは、メイキングのインタビューから紹介したい。 前述2000年公開の「花様年華」の続編であるといわれているが、監督によれば続編ではないとのことだった。 監督は「続編とは1作目のストーリーの続きを描くものだ。もし続編ならマギーとトニーの関係がどうなったかという話になる。『2046』と『花様年華』はつながりはあるもののストーリー的には別のものだ。過去とどう向き合うかという話だ。『花様年華』のチャウは1963年にいたが『2046』では、2~3

          ウォン・カーウァイの香港映画⑨「2046」(2004年)

          ウォン・カーウァイの香港映画⑧「花様年華」(2000年)

             2023年8月  石野夏実   原題は「花樣年華」。英題は「In the Mood for Love」(訳すなら「愛してみたい」あたりか)  ウォン・カーウァイ監督は20世紀末の10年間に、90年代の香港だけでなく日本を含めたアジアを代表する新しい映画スタイルの旗手であり映像作家と呼ばれる世界的な映画監督となった。 その代表作を1本選ぶとしたら「花様年華」であろうといわれていたことさえ、少し前まで私は知らなかった。 ウォン・カーウァイ作品は、人気でいえば「恋する惑星」(

          ウォン・カーウァイの香港映画⑧「花様年華」(2000年)

          ウォン・カーウァイの香港映画⑦「ブエノスアイレス摂氏零度」(1999年)

              2023年8月  石野夏実   この映画は97年に公開された「ブエノスアイレス」のメイキングを含むドキュメンタリー映画である。監督名は違うがカーウァイ監督自身も関わっており、本作とは裏表の関係である。したがって監督作品と同じ扱いにした。    アルゼンチンでの3週間のロケの予定が長引いたため、主役二人のうちのレスリー・チャンがコンサートツアーで香港に戻らなければならない時が来てしまった。 ストーリーの変更はもちろん、レスリー・チャンとトニー・レオンのふたりの恋愛話であ

          ウォン・カーウァイの香港映画⑦「ブエノスアイレス摂氏零度」(1999年)

          ウォン・カーウァイの香港映画⑥「ブエノスアイレス」(1997)

             2023年8月  石野夏実   原題は「春光乍洩」で意味は雲間から差し込む春光の様子。英題は「Happy Together」。 男女の恋人同士でも、思っていることと反対のことを言い合ったり反発でしか動けないペアがいるように、ゲイのふたりにだって、喧嘩ばかりしていて一緒にいれば気持ちとは別の行動に出てしまうペアもいるようだ。 素直になれない、謝ることができない、優しい言葉がかけられない、そんなふたりがこの映画の主人公のふたり。香港からアルゼンチンにやってきたファイ役のトニ

          ウォン・カーウァイの香港映画⑥「ブエノスアイレス」(1997)