フランス映画「冒険者たち」感想

第12回 2022.11.20「冒険者たち」他会員当番推奨映画〈1967年公開)フランス映画    2022.11.8記  石野夏実

監督はロベール・アンリコ、音楽はフランソワ・ド・ルーベ「レティシア」、原作者ジョゼ・ジョヴァンニ「生き残った者の掟」
 
若い男性や男のコたちはジョアンナ・シムカス(レティシア役1943~)、女性たちはアラン・ドロン(マヌー役1935~※2024.8逝去)、中年はリノ・ヴァンチュラ(ローラン役1919~1987)が目当てで観たであろう、今から55年前のフランス映画。

3人はそれぞれが自分の夢の実現のために生きてきた。ローランは新型レーシングカーエンジンの開発に夢中のエンジニアで中古車の解体業者。
マヌーは凱旋門の低空飛行に挑戦するパイロット。
レティシアは廃材を使って表現する前衛アーティスト。
廃材集めのレティシアがローランと知り合い、ローランとマヌーは前から仲が良く、繋がった3人はすぐに親しくなっていった。

しかしローランは新作エンジンが爆発するし、マヌーは凱旋門通過の依頼者に騙されパイロットライセンスは永久停止になった。
レティシアは個展が新聞に酷評され、ふたりの所へ泣きながら帰ってきた。

マヌーとローランは、凱旋門をくぐる低空飛行の罠でマヌーを引っ掛けた遊び人たちのひとりを叩きのめし、捕まえてコンゴの海に眠る財宝の話を聞きだしていた。
ふたりはこれに賭けるしかなかった。
落ち込んでいるレティシアにも「気分転換に旅行に行こう」と誘った。
今までは一人一人の冒険だったが、これからは同じ夢に向かっての「冒険者たち」となった。

行先は5億フランの財宝が眠るコンゴの海。

財宝は見つかったが、財宝のありかを知っていて新たに仲間に加わった男(財宝を乗せた墜落飛行機パイロット)を追う悪人たちの襲撃によって、レティシアは船上で死んでしまった。
結局その男も殺され、大金を手にしたローランとマヌーは悪人たちにしつこく命を狙われた。

レティシアから大金が手に入ったら故郷の無人島を買いたいという夢を聞いていたローランは、その島を手に入れた。
その島を舞台に最後の銃撃戦が始まりマヌーも命を落とす。
ローランが投げる柄付き手榴弾で悪人は全員死亡、ひとりローランだけが残った。

最後に海に浮かぶ要塞だった無人島とローランを映し、カメラは要塞全景の空からの旋回ショットでエンドロール。
ふたりに愛されたレティシア。3人の絶妙な友情はレティシアがふたりを信頼し愛していたからだろう。
どちらかを選ぶ前に(ローランを選んでいた)レティシアは短い生涯を閉じた。
ふたりは海の底にレティシアの亡骸を葬るため潜水服を着せ、水中で3人で繋いでいた手を放した。
 
76年にジョアンナ・シムカスが突然シドニー・ポアチェと結婚して(当時はとても驚いたので)慌てて「冒険者たち」のレンタルビデオを観た。
当時は、マヌー役のアラン・ドロンにしか目がいかず、ローラン役のリノ・ヴァンチュラの魅力にも気が付かなかった。
今なら私も、レティシア(ジョアンナ・シムカス)と同じように一緒に暮らすならもちろんローランでしょうと思う。
最初はおっさんにしか見えなかったローランが、時間が経過するごとに場面が変わるごとにカッコいい中年になってゆき、すっかりリノ・ヴァンチュラのファンになってしまったのでした。
口笛のテーマ曲「冒険者たちのテーマ」もラストのピアノの調べのそれも、遠ざかる要塞の映像とマッチしていてとても良かった。

楽しい時って、ほんとうに短い時間だと思う。宝探しのつかの間の船での生活。泳いで潜って食べて笑って、楽しんで。
短い命を生きた。

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