韓流ドラマ「ただ愛する仲」(2017)

 韓流ドラマ「ただ愛する仲」2017年末~全24話(2022年12月1日~7日Netflixで視聴)
                 2022.12.8記  石野夏実
                2024.11.4補遺

※2年前の文章の前に補遺を少し。
2022年は「愛の不時着」以降あまり韓ドラを観ていなくて、たまたま見つけたドラマがジュノとウォン・ジナのこの重い内容のドラマだったと思います。たぶん韓ドラの感想を勝手にPCに書き溜め始めての第1号原稿です。
原稿を読み返しているうちに、24話もある韓ドラに関し、自分の言葉であらすじを手短にまとめることの大変さを味わった当時を思い出しました。
文字を打っては消しての作業は、執筆意欲もわきますが思いのほか時間もかかります。それでも手をかけた分、愛着もわき、形で残りますね。

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12年前にショッピングモールで大規模崩壊事故が発生した。その事故に遭遇し奇跡的に救出され生き残った少年ガンドゥ(ジュノ)と少女ムンス(ウォン・ジナ)の再会と再生の恋愛物語。※実際にソウルで起きた事故がモチーフ。
この事故で現場で働いていた父親を亡くし、脚に大怪我の後遺症を持つガンドゥは、日雇い労働などの仕事で妹の医学部の学費を払い多額の借金を背負っていた。
心根は優しいが短気で喧嘩っ早い一匹狼の若者ガンドゥは、妹がインターンになりやっと肩の荷が下りる頃だった。

一方ムンスは、事故で子役モデルの妹が犠牲になり、自分だけが助かったという罪悪感を抱きながら、事件の補償金で風呂屋を営む酒浸りの母親と別居中の無口な父親の間で健気に生きていた。
ふたりは、そのモ―ルの跡地に建てられるバイオタウンというプロジェクトの現場作業員と、設計事務所の模型作り専門員として働き始めた。

ふたりの雇い主は、父親がショッピングモールの設計者で事件後自殺し、母親はこの建設会社の会長の後妻になっていて義妹とはかって恋愛関係にあった人物である。
このような韓国ドラマ定番の内輪でのドロドロごちゃごちゃした家族関係もドラマに入れ込んでいるため、16話で終わらずに24話仕立てになっている。
1話あたり約1時間、24話完結のドラマはかなり長く、合計すると24時間だ。途中で、内容の暗さとひっぱり度合が多すぎて、観るのを中断したほどだ。韓国ドラマはCMも入らないので、ストレートで1時間みっちり観客を引き付けなければならない。
今どきの映画は、目安2時間モノが多い。
単純計算で映画12本分と同じことになる。
細部は相関関係と場面の回想、全体では月日の長さスケールの大きさで膨らませなければ、20時間30時間も引っ張ることは難しい。
しつこくなるのは致し方ないことだろうが、もう少し話数を減らせないものだろうか。
昨今「愛の不時着」(2019)が起爆となり何度目かの韓流ブームであるという。K-POPのアイドルスター達もドラマへの進出が著しい。彼らには「演技ドル」という愛称がつけられている。因みにこのドラマの主役ジュノは2PMという6人グループの一員で日本にもファンが多い。

コロナ禍で外出して映画を観るよりも、家での配信サービスを利用する人がますます多くなった。
定額で月額利用すれば韓流ドラマだけでなく邦画も洋画も、人気が高かった内外ドラマもアニメも観ることができる。
最近はオリジナル作品にも力を入れている配信サービス大手も多い。
この1年を省みてもその作品数は著しく増えている。
まとめ的な韓流ドラマ全体考は、次回あらためて書くことにして、もう一度今回の作品に戻ることにする。

このドラマの設定は、事故の犠牲者とその家族、49名の犠牲者の墓碑の移設が中心であるので当然のことにように重くて、これでもかというほど実に暗い気持ちになるように作られていた。
主人公のふたりは、犠牲になった人々を忘れないという気持ちを形に表すため、残された家族を一人一人訪ね歩き、故人へのメッセージを崩壊現場の柱の残骸に書き込むモニュメントを作ることに力を注いだ。

彼らの作業と並行して、人生とは何か、愛することとは何か、という全編に流れるこれらの主題を照らす会話や、胸中から流れ出る言葉の真実の持つ力の手応えと説得力を、これでもかと押し出す力の強さは半端なかった。

ふたりの主人公、無鉄砲なガンドゥ=ジュノと清純なムンス=新人のウォン・ジナは、この難しい役をそれぞれが違和感なく見事に自分のものにして最後まで成りきって最終章を迎えることができた。

もはや肝移植しか生きる術がなかったガンドゥが息絶えて、ムンスの腕の中で死んでしまうところでドラマは終わるのかと思い、涙をこらえることができなかったが、最後の大展開でハッピーエンドとなった。

人は愛する人のために何としてでも生きなければならない、メッセージは十分に伝わった。突拍子もないSFものや、財閥やお金持ちの地位争いではなく人の生きる姿を丁寧に描く韓流ドラマもあるのだ、という韓ドラの奥深さを知った青春映画であった。

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