タルコフスキー監督作品①「ローラーとバイオリン」

タルコフスキー①「ローラーとバイオリン」〈1960年)
2023,10.26  石野夏実
 
タルコフスキーは1932年生まれで86年年末にパリで肺ガンのため客死。この作品は全ソ国立映画大学の卒業制作として監督した46分ほどの短編というよりは中編である。また単独初監督作品である。(※アイ・ヴィ―・シーという独立系カンパニー発売の定価1800円のDVDであったが、アマゾンで1300円ほどで新品を入手した)

ある日、7歳の男の子のサーシャ―はすぐ近所で赤いローラーを運転し道路の整地をしている若い労働者セルゲイと知り合いになった。サーシャはバイオリンを習っていて洋服も容姿もお坊ちゃま風。
近くに住む悪ガキたちにいじめられる日常のようだった。

サーシャはバイオリン教室に行くところを悪ガキたちに見つかり、セルゲイが助けてくれた。
セルゲイはサーシャの受け答えの賢さや、ローラーの扱い方の飲み込みの早さが気に入り昼休みを共にした。
古い建物を壊している現場の見物にも連れて行き、急に雨が降ったりアクシデントもあったが、一つも怖い場面がなく安心して観ていられた。

生の牛乳と長いパンの昼食を食べさせてもらいながら、セルゲイの前で精一杯バイオリンを弾いた。それは美しい音色であった。
近所の映画館で上映中の人気映画を、セルゲイとふたりで観る約束をして帰ってきたサーシャ。
しかし帰宅した母親に油で汚れた手でバイオリンに触ってはいけないとか、労働者のセルゲイとあまり親しくならないようと言われ、その夜の映画の約束は破られた。
サーシャの家族構成はよくわからなかったが今でいうキャリアウーマン風な母親とふたり暮らしのようだった。
7時という約束の時間が迫り、セルゲイはサーシャの共同住宅まで様子を見に来た。サーシャはベランダから譜面用紙にメモを書いて飛ばしたが届かなかった。
ローラーの仕事は今日で終わりと聞いていたサーシャ。
芽生えた友情は続かなかったが、一日だけの楽しかった思い出は一生心の宝物として残るだろう。
 
もう一度、またどこかで会えるといい。
 
  

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