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「玉筋魚」は初耳

手前味噌だが、石巻日日新聞で連載中のお魚企画「座間先生の目からウロコ」が面白い。元地元水産高校教諭ならではの手書きの絵と詳しい解説、ほっこりする「こぼれ話」も魅力だ。

本日掲載は「仙台湾編」。宮城では、"ハモ"と呼ぶマアナゴ、冬の風物詩のタラ、石巻ではおなじみのイワシなどが取り上げられている。


その中で、目にとまったのは「メロウド」だ。強烈ではないが、何となく思い出がある。メロウドとは方言で、和名はイカナゴ。20センチぐらいの細長い体が特徴の魚だ。



震災前、実家に帰省したとき、昼過ぎぐらいになると、玄関から「メロウドいらねすかぁー」と大声がする。獲ったばかりの大きな袋いっぱいのメロウドを500円ぐらいだったか、恒例の訪問販売だ。


鮮度は申し分ない。大きさだけをチェックして、母や祖母が購入していた。そんな時の夕げは決まっていた。メロウドとワカメの煮つけ。つゆは、濃いめの醤油味。ザクっと厚めに切られた大量の雄勝ワカメの中で、旨味たっぷりのメロウドが泳いでいるような格好だ。おいしいけれど、骨が邪魔になる。骨を取ると身が崩れ、そのまま食べると、いつまでも噛まないといけなくなる。そのルーチンが面倒ながらも、季節を感じる家庭料理の一つだ。


それから、もう一つの思い出。石巻では、鮎川という古くからの捕鯨基地があり、数年前まで毎年5月に水産庁による鯨類捕獲調査が行われていた。平たく言えば、仙台湾沖に回遊してくるミンククジラを獲り、鯨の摂餌が漁業に及ぼす影響を調べるというミッションだ。


調査開始日には、調査団長による記者会見が開かれ、当該調査の目的や昨年度の結果などを発表。その後の複数隻の捕鯨船の出港式も併せて記事にするという内容だった。


なぜ、メロウドで捕鯨を連想するかというと、自分が取材していた当時は多くの鯨がメロウドを捕食していたため。その結果も調査団が発表するのだが、その際に必ずと言っていいほど、記者が混乱する事案が発生する。


自分がメロウドと呼ぶ、この魚の和名はイカナゴ。そして、この魚の稚魚はコウナゴ(小女子)と呼ばれる。石巻ではコウナゴも佃煮などでメジャーな存在。


記憶があいまいなので、例えばになるけれども、こんな感じ。プロジェクターの発表文はイカナゴになっているのに、説明がメロウド。その後の雑談では「今年もイカナゴがほとんどだけれど、コウナゴも多い」。初めて取材する新人記者なんかは思い切り面食らう。そこにイワシやその稚魚のシラスなんかがでてくると、もはや訳が分からなくなって、鯨は結局何を食べたの?ということになる。


こんなこぼれ話を披露したくなる連載企画「座間先生の目からウロコ」。連載が進むたびに、まだまだ書けそう。

ぜひぜひ日日新聞で読んで、皆さんの魚の話も聞かせてみてください。

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