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エンタメのグローバル化に対する考え方(1)

 エンタメを含む我々の文化は常に変化している。この主張に異を唱える者はいないであろう。文化は固定(ソリッド)ではない。
 この絶え間なく変化する文化を、ジグムント・バウマンは流動化する液体(リキッド)として捉え(バウマン[2014])、スコット・ラッシュとジョン・アーリは再帰性のある人・モノ・金・情報などのフロー(流れ)として捉えた(ラッシュ&アーリ[2018])。詳細はそれぞれの書籍に譲るが、重要な点は、いずれの論述においても、文化の変化の一形態であるグローバル化は、さまざまな要因が絡み合う多面的な事象であるということだ。

 文化の一部であるエンタメのグローバル化も例外ではない。エンタメのグローバル化も極めて多面的であるはずだ。従って、総論として、あるエンタメがグローバルに成功した成功要因を分析するとき、そこには必然的に多面的な厚い記述(分析)が求められる。ある2、3の要因だけを挙げて、これが成功要因ですといえるようなものではないだろう。もちろん複数の要因に濃淡をつけて記述する場合はあるだろうが、可能な限りさまざまな要因の検討をすべきであろう。

 どのように要因の多面性を考えればいいのかという点については、アルジュン・アパディライの「グローバルな文化の流れの5つの次元」が一つの参考になる(アパディライ[2004])。アパディライは、前述のラッシュとアーリ同様、文化をフロー(流れ)で捉え、文化のグローバル化を以下の5つのフローに分類している。

 ①エスノスケープ(Ethnoscapes):人
 ②メディアスケープ(Mediascapes);メディアを介した情報
 ③テクノスケープ(Technoscapes);技術
 ④ファイナンススケープ(Finacescapes):資本
 ⑤イデオスケープ(Ideoscapes);観念

 ①〜⑤は全てエンタメの制作に関係する要因である。従って、あるエンタメがグローバルで成功する際、これら①〜⑤の要因が複雑に絡み合っていると考えられる。この複雑に絡み合った要因を可能な限り余すところなくすくい上げてくるのが、エンタメのグローバル化の研究で求められていることである。

参考文献
ジグムント・バウマン『リキッド化する世界の文化論』 [2014] 青土社
スコット・ラッシュ ジョン・アーリ『フローと再帰性の社会学 ー記号と空間の経
 済ー』[2018] 晃洋書房
アルジュン・アパディライ『さまよえる近代 ーグローバル化の文化研究ー』
 [2004] 平凡社


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