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情報社会を生き抜くための本50「ネット依存症のことがよくわかる本」(樋口進)

ネット依存が問題になってもう10年以上経つ。オンラインゲームをしすぎて死んでしまった事件が話題になったころだ。いまやEスポーツがオリンピック種目にするかどうかが真剣に議論される時代になった。しかし、依然として、ネット依存で苦しむ者がいる。この本は2013年に久里浜医療センターの院長である樋口進ドクターによって書かれた。久里浜医療センターはもともとはアルコール依存専門病院だが2011年からインターネット依存症治療部門 (TIAR : TREATMENT OF INTERNET ADDICTION AND RESEARCH)を設けている。

私はインターネット依存に関する本だけでも10冊以上は持っているが、どのページにもイラストや図を用いていて分かりやすく、この本がオススメ度ベスト1だ。

一番気になる治療に関する内容・・・患者はさまざまな背景をもっている。人によってネット依存症になった理由も期間も違う。その特徴をつかみ、個々の治療方針をたてることが必要だ、と書いてある。アルコール依存もそうなのだ。ゲームをしすぎると依存症になるわけでではない。ゲームをしすぎてしまう背景に何か根本的な問題があるのだ。そこを見極めないと単にゲームをしないようにするだけでは治療にならない。

ネットにはまって「ひきこもり」になる例ともともと「ひきこもり」があってネット依存になる例では、治り方が違う。後者は、治りにくいのだ。

また、うつ病を合併することが多い。「これは原因というより結果といえる」と解説する。「自分ではやめなくていけないとわかっていることをやめられない。そんな自分を責め、自己嫌悪になり、うつ病へと進む」のだそうだ。マイナス思考のスパイラルにおちいるのだ。

治療法もいくつか紹介されている。「記録法」「認知行動療法」「アクティビティ」「心理社会的治療」「生活リズム」「自分で取り組む」「家族の対応」・・・見出しだけならべた。

元患者からのメッセージは貴重だ。
「今だから言える。あのとき知っていたら・・・」
<ハマり始めている人へ>
・無理にでも人と付き合う:もともと人付き合いが面倒だった・・・それが
・ネットの友人はほどほどに:ネットではあまり深い友人関係を築かない方がいい
<治療中の人へ>
・ネット依存症は治ります:普通の生活の戻れた。自分にとってこれが回復。
<治そうと決意した人へ>
・まずは見た目を整えて:ふとガラスに映った自分の姿「女を捨てている」・・・

ネット依存は新しい病気であり、その後の20年、30年の変化はまだわからない。と著者は恐れている。今、10年経った。社会におきる問題のほとんどはネット社会につながりをもっているようになった。ネットから常に情報を得ていないと不安になる人は確実に増えている。