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情報社会を生き抜くための本39「なぜ、読解力が必要なのか」社会に出るあなたにつたえたい(池上彰)

「プルーストとイカ」を書いたメアリアン・ウルフさんや「教科書が読めない子どもたち」を書いた新井紀子さんなど情報化社会を生き抜く極めて重要な力として「読解力」をあげる方は多い。池上彰さんもかねてから読解力の必要性を説いていたが、本書はこの11月(2020年)に出版されてからベストセラーとなっている。

PISA調査の読解力を生きる力とイコールで結び、「国語教育における小説や評論などの文章を正確かつ詳細に読む力」とは違うのだということから本書は始まる。池上氏は読解力を「テキストのみならず自分以外の他者、直面した状況などの多岐にわたる『相手』のことを正しく理解する力」とする。

この文脈から「忖度する力」を思い浮かべるが、この違いを「忖度力とは、相手に配慮することでその先にある『自分にとっての目先の利益』を素早く見つける力」と明確に区別している。また、炎上やデマなどが日本だけでなく世界中で問題になっているが、ネット情報を拾い読みする傾向が生み出す・・・つまり「読解力」がないことが原因と考察する。

池上氏は、二つの「読解力」を使いこなすことを促す。「論理的読解力」と「情緒的読解力」だ。
「論理的読解力」・・・論理的な文章を読み解く力
「情緒的読解力」・・・情緒的な文章を読み解く力
この2つの読解力は、国語教師は現場感覚としてもっている。また、教科書教材はこの二つの教材を用意し教科書を編集している。

読解力を鍛える方法について、「書く」「聞く」「伝える」、そして「読む」ことだとしている。方法の詳細は本書を読んでもらえばいいのだが、私は文脈をどう読むかを念頭においた言語活動と考えている。文脈への意識化をすることが読解力を鍛えると思うのだ。池上氏が自己の経験から生み出した方法は国語教育の現場意識でとらえてもきわめて合理的なものだ。

本書の中で、伝記を読むことを勧めている。私も同意見で、伝記をたくさん読むことでレジリエンスを生み出すと考えている。レジリエンスとは、簡単に言うと「困難な状況で心が折れないタフさやその能力」。特に私のお勧めはスティーブ・ジョブズの伝記で、これも池上氏と同じだった。