飛行機の本#24 KG200(J・D・ギルマン/ジョン・クライブ)
KG200(Kampfgeschwader 200:第200爆撃航空団)とは、第二次世界大戦中のドイツの秘密爆撃部隊のこと。敵から捕獲した飛行機や新型機のテストなどを行なっていた。『KG200』というタイトルのこの本は、この秘密部隊を題材にしたスパイ冒険小説。
この本では、捕獲したアメリカの爆撃機B17を集めて爆撃部隊を編成し、特殊大型爆弾で長距離爆撃をしようという企みを軸にスパイ小説仕立てで物語を作っている。
実際にドイツ軍は捕獲したアメリカの爆撃機を使って、本物のB17爆撃部隊に紛れ込ませる作戦を行なっていた。以前書いた、#20『 ワイルド・ブルー』の中にもこのエピソードが描かれていた。無線を傍受しながら紛れ込んで、その位置をドイツ戦闘機隊に知らせる役目をしていたという。
また、この航空団がテストしていたミステル(やどりぎ)についてもその操縦の難しさについて何箇所かに触れられている。ミステルというのは無人の双発爆撃機に爆薬を詰め込んで、その上にパイロットの操縦する小型戦闘機を2段重ねでくっつけ、ミサイルのように切り離して誘導する秘密兵器である。有効な無線誘導装置がなかったため、このような仕組みで爆撃を誘導したのだ。いまのドローンだ。
発想はユニークなのだが、KG200の話だけに絞ればいいのにスパイ小説や冒険小説、ロマン小説などのエッセンスを混ぜてしまったので、物語がちょっと雑になってしまったような気がする。もっとドキュメンタリーとして絞っても面白さがあるのにもったいないと思った。
作者の1人、ジョン・クライブは映画俳優で、オランダでのロケ中に泥と海水の下から墜落機を発掘している作業に出くわし、この本の発想を得た。しかし、物語にまとめるのに力不足ということで軍事専門家でスリラー作家のJ・D・ギルマンに助けを求め完成させたのだという。どおりで・・・と思う。
KG200
J・D・ギルマン ジョン・クライブ
集英社 1978/9/1