情報社会を生き抜くための本55「ドラッカーの遺言」(ピーター・F・ドラッカー)
ドラッカーの本はたくさん持っているが、何度も読み直すのは「経営者の条件」とこの「ドラッカーの遺言」だ。どちらもちょっと行き詰まったり、息抜きをしたりというときに書棚から取り出してぱらぱらめくり、その部分だけを読む。しかし、そのときに確実に言葉をもらえる。そういう本なのだ。だから結構あちこちに付箋がはさまれている。
いつ、どういうときにその付箋をはさんだかは覚えていないが、その部分を書き出してみると、やはりなるほどなあと思ってしまう。
「日本が直面しているのは危機ではなく、時代の変わり目である。時代が変わったことを認め。その変化に対応していくための意識改革に取り組むべきである。ー変化を拒絶してはならない」
「私が注目しているのは、ただ一点のみ、アジアに起こる変革が、中国を中心としたものになるのか、それとも、圏内の各国それぞれが個別に革新を成していく形をとるのか、という問題です。個人的には、中国を軸に据えたアジアの再編は間違いであると考えています。そうなると、アジアは中国に支配される地域になってしまうでしょう。」
「私たちは今、転換期に生きています。ところが多くの人は、そのことを理解していません。変化は予測できず、理解することも困難で、みなが考えている常識に反する形で起こるからです。しかし、変化した現実に考え方をすり合わせていく過程にこそ、好機は訪れます。」
「経営の本質とは何でしょうか?」ーこう問われるたびに、私が問い返す3つの質問があります。
①「あなたの事業は何か?何を達成しようとしているのか?何が他の事業と異なるところなのか?」
②「あなたの事業の成果を、いかに定義するのか?」
③「あなたのコア・コンピタンス(独自の強み)は何か?」
先の質問を一言で言えばこうなります。
「成果を得るために、どんな強みを活かして、何をしなければならないのか?」
経営の本質は、すべてこの一言に言い表されています。前世紀の経営にもとめられていたものも、そして新しい世紀における経営の本質も大した違いはありません。
「どんな長所を活かし、何をすることで、どれだけの成果を挙げるのか?」
すべてこの一言に集約されているのです。」
「人はリーダーに生まれない。
生まれついてのリーダーなど存在せず、
リーダーとして効果的にふるまえる習慣を持つ人間が
結果としてリーダーに育つのだ」
脈絡なく、拾い出してみた。そのとき、これらの言葉に触発されたことだけは付箋として残っている。
この本が書かれたのは、2005年7月。講談社BIZの記者からのインタビューを受けるという形で執筆された。その年の11月11日に、1週間後に96歳という日に亡くなった。