飛行機の本#30インペリアル航空109便(リチャード・ドイル)
屋根裏の本の整理をしていたら、前から探していた本が出てきた。「インペリアル航空109便」だ。大西洋横断の飛行艇を舞台にしたオリエント急行の飛行艇版のような冒険小説。時代は第二次世界大戦直前で、各国が緊張状態にある。ゲシュタポや亡命するユダヤ人も登場し、スパイ小説のスパイスも効いている内容。2段組で400ページもあり、超大作だ。20年くらい前に一度この感想をブログで書いたことがある。それを参照し、本をパラパラ読みなおしてみた。
登場する飛行艇は、インペリアル航空のS30Cショート・エンパイア機で「カテリナ号」と名付けられている。「空をとんだうちで最も美しい飛行機の一つであり、十年前ドイツの巨大な飛行船が姿を消し、二度と見られなくなって以来、他に類のないスタイルと贅沢さで乗客を運んでいた」と紹介されている。
本書の扉裏にはショート・エンパイア機の内面図が掲載されていて、この小説を読みすすめる上でこの構造をたびたび見ないとイメージがもてない。巨大な大西洋横断の飛行艇だが乗客は12名。船の一等乗客のような扱いを受けて飛ぶのだ。当然いわくつきの乗客ばかりだ。主人公の操縦士もパイロットでありながら旅行の途中で自動車レースに参加する。このレースに登場する自動車も1924年製イスパノ・スイザやドライエ135というこだわりのあるチョイス。おそらく作者は、この大陸横断飛行艇や戦前のスポーツカーを描きたかったために冒険小説を書いたんだろうなと推測する。ちなみに作者リチャード・ドイルは、シャーロック・ホームズを書いたコナン・ドイルの甥孫だそうだ。
南アフリカを出発、スーダン、ウガンダ、エジプト、クレタと北上し、アテネ、ローマ、マルセイユを経由して、イギリス、南アイルランド、カナダ、ニューヨークへと6日間かけて渡る。途中で空中給油までうける。行く先々で冒険や恋愛などお約束の事件が起きるなか、カテリナ号はゆうゆうと飛行していくということになる。
小説が花形エンターテーメントだった当時の長編大作だ。頭の中でいろいろなシーンを想像しながら読む力がないと読みきれないだろうな。Netfrixが映像化してくれると面白いのだけれど。
インペリアル航空109便
リチャード・ドイル 作
小菅正夫 訳
サンリオ 1981年