情報社会を生き抜くための本62「時間の分子生物学」(くるめ和彦)
情報社会では5人に1人が睡眠障害をかかえているという。それが中高生に限ると4人に1人とさらに深刻になる。そのほとんどの原因はメディアにかかわる時間が多くなり必然的に睡眠時間を削っていくことによる。さらに夜更かしによる睡眠相後退症候群を起こす。
さて、睡眠をつかさどる仕組みが遺伝子工学の発展とともに解明されたのは20世紀最後の数年という。それが分子生物学という比較的新しい学問である。睡眠という現象が遺伝子とかかわり生物時計によって身体をさまざまに制御している。
概日周期(サーカディアン・リズム)はおおよそ25時間で、地球の1日の周期と微妙にずれている。どうしてずれているかについては、まだ解明されていない。光を浴びることによってリセットされることはわかっている。リセットすることで毎日微調整できることが重要なのかもしれない。
睡眠の特徴は
1 自発的・随意的な運動の低下や消失・・・じっとしていること。
2 外部からの刺激に対する反応性の低下・・・呼びかけても反応しないこと。
3 生物種に応じた特徴的な姿勢・・・人間の場合は横になること。
4 強く揺り動かすことで覚醒・・・気を失っている場合はおきない。
5 睡眠をとる場所が一定・・・自宅の寝床で眠るのが多い
医学的には脳波で定義されているが、二つの睡眠状態がある。レム睡眠とノンレム睡眠というやつだ。
さて、睡眠にはまだまだ未解明なことが多く研究も多面的なアプローチが取られている。本書は、分子生物学という世界からのアプローチである。「睡眠負債」という考え方が、TV番組や雑誌で取り上げられ話題になったことがあるが、本書にも眠気と睡眠負債として説明されている。眠気は睡眠負債に比例している。つまり、寝不足は睡眠負債となって眠気のある状態になる。あたりまえだが、ちゃんと眠れば負債は返せるが、慢性的に負債が嵩んでいるのが情報社会の特徴かもしれない。
興味ふかい提言がされている。生物時計は光によってリセットされるので、起きてから光を浴びることが重要である。光によって時計を進めることができるのは朝のうちだけなので、夜遅くてまで起きていても朝きちんと光を浴びることが重要ということだ。だから「早寝早起き」ではなく、「早起き早寝」が正解と考えるのだという。