ボーイング B-17 フライング・フォートレス(1938)
第二次世界大戦のヨーロッパ戦線で伝説を残した飛行機といえばこのB-17があげられる。「高射砲弾の弾幕の中、編隊を崩さずひたすら忍耐の中でドイツ上空を飛行し、爆弾を落とした後は群がるドイツ軍戦闘機と撃ち合い、ズタズタになった機体で重傷を負った搭乗員たちを励ましながらパイロットがドーバー海峡を目指す」劇的なシーンは『頭上の敵機』や『メンフィス・ベル』などの映画やテレビドラマなどにされた。また、ゲームや小説にもよく出てくる定番である。つまり、それほどこのようなシーンが日常的にあったということである。実際に、写真を検索すると機体前部が吹っ飛ばされても基地にたどり着いた写真や尾翼がちぎれかかっても飛んでいる写真などを見ることができる。
ヨーロッパ戦線での活躍が伝説的になっているが初期の太平洋戦線でも日本軍を悩ませた。ラバウル航空隊との熾烈な戦いでも戦闘機と互角の戦いを行った。ただ、B-24が戦線に登場するとほとんどのB-17は引き上げられヨーロッパ戦線に送られることになる。高高度の戦いにB-17が熱望されたのだという。
そんな伝説を生み出したB-17は、打たれ強い「タフ」な爆撃機だ。頑丈で安定した飛行性能を持っていて、エンジンの一つや二つを撃たれても主翼に大きな穴が空いていても飛び続けることができ、乗員から信頼をおかれていた。その点、B-24が速度や航続距離、積載能力で優っていながら撃たれ弱いため搭乗員に嫌われたのと対照的である。
B-17の開発設計の開始は1934年と古い。アメリカは孤立主義を貫いており、戦争とは縁がないと思っていた議会や米国民から支持を得るため、「国を守るための空飛ぶ要塞(フライング・フォートレス)」という名目でようやく開発されることになる。列車砲に代わる「空飛ぶ砲台」という説明が認められたのかもしれない。
しかし、いざ戦争がはじまると戦闘機を伴わない侵攻作戦で大活躍することになる。10丁以上の銃器で武装し、さまざまな防弾装置で固めているため、対戦闘機との戦闘能力も高く簡単には墜とされなかったのだ。編隊飛行を組み弾幕を張ることでさらにその力を最大限に発揮でき、逆に戦闘機がB-17に墜とされることも多かった。
機体で特徴的なのは巨大な垂直尾翼である。伸びやかなラインで描かれている。垂直尾翼の麓に最後尾の銃座があり、この位置の銃手は孤立していて怖かったろうなと思わせる。また、胴体下部の球形銃座(ボール・ターレット)も負けず劣らず怖い位置に閉じ込められることになる。敵機からの集中砲火を浴びながらこんな位置で撃ち合うなんて、怖い怖い。側面機銃手は、装甲ベストに装甲エプロン、そしてヘルメットを装着していた。総重量は11kg以上になったという。
平面図を見ると尾翼も主翼もどっしりと幅が広いことがわかる。それがこの飛行機の安定の良さにつながるのかもしれない。B-24の細長い主翼と対照的である。
<B17の平面図>
<B-24の平面図>
試験機Y1B-17のエンジンにターボ過給器がつけられると高度航空性能や速度が向上した。具体的には時速385km/hが時速436km/hに、上昇限度も9000ft上回って38,000ft(11,580m)になった。以後、B-17にはターボ過給器付きエンジンが装備されることになる。武装は12.7mm機銃を機体前部、上部、下部、側面部、後部に配置した。ドイツ上空への爆撃行の中、現地改造ではじまった顎部の動力砲塔(チン・ターレット)もB-17Gから制式装備になり、全身ハリネズミのような銃の配置になる。弱点は航続距離の短さと爆弾積載量である。
<B-17Gフライング・フォーレスト>
全長 22.55m
全幅 31.53m
全備重量 22,102kg
発動機 P&W R-1820 (1,200hp)× 4
最高速度 486km/h
航続距離 2,832km
武装 12.7mm機銃×11
乗員 10名
・飛行機の本#24 KG200(J・D・ギルマン/ジョン・クライブ)
・飛行機の本#12 リアル・グッド・ウォー(サム・ハルパート)
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