情報社会を生き抜くための本40「池上彰のメディア・リテラシー入門」(池上彰)
「リテラシー」とは「読み書き能力」のことである。「メディア・リテラシー」とは、さまざまなメディアを「読み書き」する能力のことになる。30年前のメディア・リテラシーの対象はTVだった。TV番組は編集されている。そのことを国語授業でどう伝えるかを研究発表していたら、教科書会社の編集に携わることになった。
もっと昔、新聞やラジオの時代からメディアの威力は国を動かす力になっていた。最初にメディアを翻弄したのは20世紀初頭の大統領選挙だったと言われる。そして、ナチスは最大限にメディアを利用し、国民を熱狂とともに戦争へと向かわせることになる。
池上彰さんは以前からメディア・リテラシーの重要性を説いている。この本が書かれたは2008年、インターネットによるフェイクニュースが問題になるずっと前である。この本で池上さんはマスメディアによる編集を問題にしている。いまや個人が情報発信する時代になり、真実とフェイクが混沌の中にある。この10年でメディア・リテラシーをつけることがますます重要なスキルとなった。しかし、本質は変わらない。情報は編集されてメディアに載る。
この本ではTV、新聞、インターネットでの情報を具体的エピソードで取り上げ、ステレオタイプで受け取らないことを繰り返し説いている。そう、「ステレオタイプ」で考えないことがメディア・リテラシーの基本なのだ。「本当にそうなの」とクリティカル・シンキングをすることが重要。
池上さんの最新刊「なぜ、読解力が必要なのか」を読んで、そうそう昔読んだ本があったなと書棚からこの本を引っ張り出して再読してみた。