コンソリデーテットB-24リベレーター(1940)
日本軍からは「コンソリ」と呼ばれていたアメリカ陸軍の四発重爆撃機である。「コンソリ」の正式名称は、コンソリデーテッド航空会社でカタリナなどの大型飛行艇の制作を得意としていた。B-17のライセンス生産を打診されたが、コンソリデーテッド社は独自に開発していた爆撃機を提案した。長距離飛行に適したユニークな主翼にアメリカ陸軍は興味を示し、XB-24という試作機名をもらい、1940年には制式採用になった。4年前に制式化された大型爆撃機のB-17は、航続距離の短さや爆弾搭載量の少なさが弱点であった。B-24は、それらB-17の弱点を補う能力をもった爆撃機として採用され、第二次世界大戦時に爆撃だけでなく、偵察から救難まで多用途に使われた。生産機数は19000機以上で、第二次世界大戦中の最多生産数になる。
B-24のデザインは、高翼で分厚い胴体など飛行艇だった祖先のにおいがあちこちにする。主翼は、デイビス翼という一種の層流効果のある厚翼構造でアスペクト比が高く(細長い翼)、長距離飛行に効果があった。また、厚翼構造の中に巨大な燃料タンクを設置できた。しかし、防弾構造になっていたとはいえこの燃料タンクに高射砲などの命中弾を受けると細長い翼が折れて燃え上がるということになった。胴体には前後2分割の大型爆弾層があり、巻き上げ式シャッターで開閉されるようになっていた。胴体全部が長く、比較して後部が短く寸詰りのように感ずる。主翼のスマートさに比べ、直線だけで引かれた尾翼は生産性はいいだろうが芸がない。垂直尾翼は二枚あり、方向舵が少し上向に曲がるようになっていて、側面図を描くときに気持ち悪い角度がついている。双尾翼であり、尾翼を破壊するとバランスを崩して飛行不能になるというので日本軍の戦闘機パイロットから体当たりでねらわれた。自分の機の主翼を引っかけるという体当たりだ。
佐貫亦男氏は、次のように紹介している。
「設計の点から見ると、B-17よりスパンが長いのに翼面積は四分の三にすぎない。したがってアスペクト比はすぐれているが、翼面荷重は大きい。そのかわり、胴体は巨大で、かつ肩翼であったから容積と利用率も大きかった。機体の全長はB-17より短かく、大型で無愛想な角ばった双垂直安定板は納屋の戸(バーンドア)といわれた。なんでもかんでも収めてしまう胴体は納屋といわれるにうってつけで、細長い主翼とともにリベレータの特徴であった。
細長い主翼は空力性能、特に航続力に決定的に有利であったが、空中で高射砲弾を食らったときには致命的であった。主翼に大きい穴を開けられたり、外翼を折られたりして落ちてゆく写真は、またリベレーターのトレードマークのようなものであった。」・・・『続ヒコーキの心』(佐貫亦男、講談社)
ヨーロッパ戦線や太平洋戦線でB-17と同じく重爆撃機として第二次世界大戦を通して活躍したが、タフでしぶといB-17に比べて、擲弾で燃え上がったり翼が折れたりと乗員には人気がなく未亡人製造機などと言われた。それでも多くの若者がB-24でドイツへの爆撃行に命をかけた。35回の出撃回数をこなせば国に戻れるが、護衛機がままならぬ時期は35回をこなせる飛行機は稀だった。
後に大統領候補となったジョージ・マクガヴァンは35回の任務をこなし、その体験を『ワイルド・ブルー』(スティーブン・E・アンブローズ、アスペクト社)という本にまとめている。編隊を組むために次々と離陸し、基地上空で旋回しながら1時間もかけて大編隊に整頓していく。その最中に、衝突して墜落するものもいる。上空ではマイナス40度から50度の低温の中での作業は、うっかり鉄部に触ると皮膚が張り付いてしまう。そのような生々しい体験が記述されている。
昭和18年、ミッドウェイ海戦後には太平洋戦線に登場する。航続距離が長大なため太平洋戦線ではB-17よりも活躍の場を得て多くの日本機と対峙した。重武装で編隊を組み高速で飛んでくるB-24に対して、日本軍の戦闘機は邀撃に上がっても返り討ちにあうことが多かった。
昭和19年、ダバオの201航空隊はB-24に対して直上方から機体を背面にし、急角度でB-24に接近射撃し、主翼と尾翼の間を通り抜けていくという極めて無茶な攻撃を仕掛けて戦果をあげていた。菅野直が隊長だった。また、杉田庄一や笠井智一がいた。彼らはこの後本土に戻り、343航空隊として紫電改に乗って活躍することになる。・・・『最後の紫電改パイロット』(笠井智一、光人社)
<B-24J リベレーター>
全長 20.47m
全幅 33.53m
全備重量 25,400kg
発動機 P&W R-1830 (1,200hp)× 4
最高速度 475km/h (7620m)
航続距離 3,380km
武装 12.7mm機銃×10
乗員 10名
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・飛行機の本#20 ワイルド・ブルー(スティーブン・E・アンブローズ)