『僕の心臓は右にある』(大城文章)ブックレビュー
“あの芸人”の本、読みました。地下芸人の、チャンス大城さんの自伝です。この人の人生、壮絶です、ホントに笑
本の帯には千原ジュニアさんからの『即映画化。』というコメントがありましたが、ほんと笑えるところはめちゃめちゃ笑えるし、かと思うと急に感動させられたりと、そんな本。ぜひ映画化してほしい。
いつもみたいな、内容を要約するブックレビューというより、自伝だから読んだ感想をメインに書いていこうと思う。
まさに壮絶、である。
タイトルの通り、チャンス大城さんの心臓は右にある。いわゆる『逆位』という特殊な身体で、その確率は約20000分の1。ただこれについて大城さんは自分を紹介する『名刺のようなもの』という。そのとおり。右心臓は大城さんの人生で起きた奇跡の中の一断片に過ぎず、それ以上でも以下でもない。そんな、奇跡が連続する半生について、この本では幼少期~芸人を目指すまでの『尼崎編』、そして芸人を目指して上京した『東京編』の2部構成で語られる。
貧乏で、いじめられっこだった幼少期は、日常の些末なことを個性的な友人たちとともに煌びやかせていた日々だ。町内会のクリスマス会のプレゼント交換でカリカリ梅を出し物に参加したウメヤマ(P19)、寝ている父親の寝室に狂暴なのら犬を放つサイトウ(P33)、定時制高校でひときわ年齢が高く作文大会で戦後体験記を発表するコダマさん(P129)。そして上京後は、結婚や出産、芸人生活を通じうつ病も経験しながらも、それでも懸命に芸人としての歩を進める日々が描かれている。声を出して笑える話が多い中で、急に感動させられる話があったりと、この本を読むことは1冊で喜怒哀楽を感じることのできるまさに“チャンス”である。
東京編では、以下の記載があった。
是非一度、お読みいただきたい。
なお、僕のおすすめの話は以下。
『純白のドレスとカリカリ梅』(P19):カリカリ梅で町内のクリスマス会へ。プレゼント交換に入るまでのウメヤマとの会話がほほえましい。
『寝室にのら犬を放つ』(P33):のら犬を放った後のサイトウの弁解と、教会での懺悔の模様が詳細に記載されている。たまらん。
『二メートルの大男』(P52):皆弱く、時に自分を守るために嘘をつく。そんな誰もがしたであろう経験のMAX値を弾き出した大城の壮大な嘘とは。
『サウザー』(P58):右心臓が起こした誤解と、“ピンチ”からギリギリ回避できたその意外な理由がたまらなくツボ。
『一流の不良、三流の不良』(P87):一流の不良に感動。普通にいい話。
『コダマさんの作文』(P128):定時制高校の雰囲気が手に取るようにわかる、コダマさんを中心に展開される作文大会。
『あの日の自動販売機』(P244):人生のどん底期。
『大失態』(P287):人生の起死回生へ。大きな失敗と、そこからの学び辿り着いた芸人としてのミッション。
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