宮崎産マンゴー

宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載8】

6.加温栽培による早期出荷でギフト市場取込む

宮崎県はマンゴー加温栽培では全国一の生産量。沖縄県は亜熱帯なので、気温が高くビニールハウスでの栽培でも雨風を防ぐことが目的でハウス内を加温する栽培方法はしていない。


宮崎産マンゴーの特徴は、加温栽培による早期出荷にある。加温栽培をしない沖縄産マンゴーの出荷は7月~8月。沖縄県内各地のファーマーズではその時期になると大量に出荷されマンゴー一色になる。宮崎産マンゴーも7月~8月に出荷すれば沖縄産マンゴーとの競争になり、マンゴー取扱いが増加し、供給が増えることから市場価格が下落することが考えられる。


宮崎産マンゴー生産農家、関係者は、沖縄産マンゴーの出荷時期と重なる7月~8月を避けて早出しする生産体制を構築した。ギフト市場の需要を取込むため4月に早期出荷した。マンゴーは7月~8月の夏場の果実というイメージがあり、4月の早出しマンゴーには希少性がある。希少性により価格も高くなるのは必然。


生産農家は出荷日を逆算して重油を燃やしてハウス内の温度を高めることで花芽、開花させる。加温で意図的に早出しが出来るので、市場における優位性を維持することができるようになった。


ただ、重油を燃やすにはかなりのコストがかかる。1生産農家当たり平均20キロリットルの重油が必要とされ、年間約140万円の費用がかかる。
原油価格が高騰すれば重油価格も上がる。生産コストが上がれば、出荷価格が高くないと採算があわない。出荷価格が低ければ生産農家にとっては採算が取れなくなり赤字になる。加温栽培はリスクがある。宮崎ではそのリスクをとって加温栽培を実施した。加温栽培はブランドの要素の一つともいえる。


マンゴー加温栽培のメリットの一つとして早期出荷、出荷調整することでギフト市場を幅広く狙える点だ。母の日は、5月第二日曜日、父の日は6月の第三日曜日なので、中元ギフトを含めると5月~8月までのギフト時期に出荷が可能となる。母の日、父の日、中元とも平均単価は6,000円台なのでマンゴーは価格的にも手頃なギフトである。

【ギフト市場】
「母の日」市場規模 201億円
平均単価 6,800円
「父の日」市場規模  96億円   
平均単価 6,500円
「お中元」市場規模 293億円   
平均単価 6,200円
出所:DNP『日常生活とギフトの実施状況に関する調査』

沖縄産マンゴーは加温栽培ではないので、7月~8月がピーク。早出ししても6月からの出荷となり、父の日ギフト市場を取込むことも可能となるが、父の日は、母の日と比べて半分の市場規模。宮崎産マンゴーは早出しすることにより590億円のギフト市場を取込むことが可能となった。沖縄産マンゴーは母の日を取込めず宮崎産の66%しかギフト市場を取込めていない。

◎宮崎産マンゴー 
母の日+父の日+中元 590億円
◎沖縄産マンゴー 
父の日+中元     389億円

2002年(平成14年)の東京都中央卸売市場全体でマンゴー年平均単価(1㎏当り)は、宮崎産2,550円に対し沖縄産1,381円と価格差は1.8倍。
2006年(平成18年)は宮崎産3,508円、沖縄産1,969円と価格差は1.78倍。
東国原氏が知事に就任しトップセールした2007年(平成19年)は宮崎産マンゴー5,556円、沖縄産マンゴー3,169円。

高騰する宮崎産マンゴーにつられて沖縄産マンゴーも価格が上昇し価格差も1.75倍の差とキープしたものの2008年以降は価格差が広がっていった。2008年(平成20年)宮崎産マンゴー4,345円、沖縄産マンゴー2,090円と価格差は2.07倍に広がった。2017年(平成29年)宮崎産マンゴー3,386円、沖縄産マンゴー1,333円で2.54倍に更に広がっている。

出所『東京都中央卸売市場年報』より筆者作成

東京都中央卸売市場全体での月別平均取引価格推移をみると宮崎産、沖縄産の価格差はかなり大きいことがわかる。
2017年の月別平均取引価格をみると3月は8,583 円とかなり高値で取引されている。出荷が増加する4月は4,653円、5月3,407円、6月3,058円、7月2,783円、8月3,024円、9月3,974円と沖縄産と重なる8月、9月で価格が上昇していることがわかる。
一方、沖縄産は6月1,922円、7月1,588円、8月1,036円、9月1,114円、10月1,318円と取引価格は8月、9月1,000~1100円台と宮崎産のような後半の価格上昇傾向は見られず停滞していることがわかる。


宮崎産マンゴー、沖縄産マンゴーの出荷が重なる6月~9月で比較すると沖縄産マンゴーの早出し時期の6月は宮崎産、沖縄産の価格差は1.59倍だが、7月1.75倍、8月2.91倍、9月3.56倍に広がっている。


宮崎産、沖縄産の月別平均取引価格差は、1.6倍~3.5倍で推移しており、宮崎産マンゴーが終始高値で取引されていることが分かる。

→連載9につづく


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