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ポスト・コロナへの憂い 懸念されるひきこもり支援の今後

 コロナのワクチン普及が進むなど、じょじょにコロナの混乱もおさまる気配を見せています。

 それ自体は悪いことではないかもしれません。世の中が、新型コロナに感染する不安や憂いから解放されれば、社会も世界も大きく変わっていくことでしょう。

 ただ、だからといって、単に元通りになるわけではありません。

 ひきこもり支援の現場に立つと、この一年半余りのコロナ禍において、少なくとも4つの課題が大きく浮上してきそうです。

第一の課題:コロナ禍での思わぬ停滞

 一つ目の課題は、コロナ禍でいくつかの当事者の支援について、どうしても停滞してしまったということです。

 この停滞の間、実は多くのケースでは状態が悪化してしまっています。

 表面的にはいつもと変わらない状態が続いていても、社会への適応力、あるいは抑うつ状態、あるいは改善意欲などは、少しずつ悪化してしまったケースが少なくないようです。

 当初、ひきこもり的ライフスタイルは、コロナ禍では、かえって強さを発揮するのではないかと言われたこともありました。

 しかし、この一年半を検証すると、自らひきこもるということと、コロナのせいでひきこもりを強いられるということは、全然違うことがわかりました。

 コロナのストレスは、心理的に脆弱な当事者の心を大きく蝕みました。重篤なひきこもりは決して、コロナ禍の“巣ごもり”環境に強くはなかったのです。

 コロナ後の支援は、コロナ以前よりマイナスからの支援のスタートになる場合が少なくありません。

第二の課題:“新ひきこもり”の出現

 二つ目の課題は、コロナ禍の“一億総巣ごもり”状態の出現で、新たな“ひきこもり”が多数発生してしまった懸念です。本来、ギリギリひきこもらずにすんでいた人たちが、この間に新たに深刻なひきこもり状態に陥ってしまったということです。

 この新ひきこもりとも言える層は、本来、そんなに深刻なひきこもり状態ではありません。

 ただ、意外と数が多いようで、今後どのように支援の体制をつくっていくかは大きな課題となりそうです。

第三の課題:限定される支援の手法

 三つ目のコロナ後に懸念される課題は、僕の支援スタイルにも関わることです。

 僕の場合、ひきこもりの当事者を単に精神疾患や障害で分類して対処するのではなく、本人の見聞を広めたり、様々な体験を積んでもらって、視野を広げて、成熟度を高めてもらう。そのうえで、自分の不安定な心理をうまくコントロールして、自分なりの元気や幸せを手にいれてほしい、というものです。(もちろん、疾病や障害の事実を無視して対応するものではありません)

 コロナの感染力ゆえに、海外などへ出かけることが難しくなりました。

 アジアなどの海外で自分だけの体験を積んでもらって、たしかな自信をつけて、自己開示(自己紹介など)できるようになってほしい…のですが、その作業を安心してできるようになるまで、まだしばらく時間がかかるかもしれません。

 現在、様々な代替の療法というか、対処法を開発したり、考え出したりしていて、一部はそれなりに効果があることもわかってきました。

 しかし、大きい効果のある手段を十分に実践できなくなってしまったことは、コロナ禍の残した大きな課題となりそうです。

第四の課題:再起動する社会に取り残される恐怖

 四つめの課題は、直近の近い将来に実際に起きるものと考えています。

 ワクチンが行き渡ることで、この国も再び様々な分野で動き出すことでしょう。経済活動も、政治も、人の流れも、世の中の流行も。

 心配なのは、そうやって新たにスピーディに動きだす“社会の急な流れ”に、ひきこもりに悩む当事者が乗っていけずに、取り残されてしまうことです。

 実際には取り残された状態でなかったとしても、多くのひきこもりの当事者は「自分だけが再起動した社会の流れに乗れない」「自分だけが取り残されてしまう」と、言いようのない不安を、誰にも言えずに“勝手に”抱え込んで、悩んでしまうかもしれません。(先走って自殺を図った若者もいましたし)

 さて、これからひきこもり支援は、当事者の悩みや戸惑いは、どうなってしまうでしょう。

 コロナ後をにらんで、僕ら支援者もいろいろな新しい対応法を考えていかないといけないかもしれません。

 最近は行政も力を入れていて、単純な家庭訪問などしてくれるケースも少しずつ増えてきています。

 今後は…僕もそろそろいい年ですし(笑)…、一般の行政や福祉ではなかなか手を出しづらい、より効果的な手法にしぼって取り組んでいくことも考えないといけないかもしれませんね。

 まあ、だからといって、やるべきことはそんなに変わりませんが(笑)。

サポートしていただければ幸いです。長期ひきこもりの訪問支援では公的な補助や助成にできるだけ頼らずに活動したいと考えています。サポート資金は若者との交流や治癒活動に使わせてもらいます。