押入れの恋人
12月某日 曇り
押し入れの中を整理していたら
懐かしいものを見つけた。
私が絵を描くという事に
大きな影響を与えてくれた昔の恋人からもらった遺書。
遺書といっても、厳密にいうと遺書ではない。(多分、今も生きてるし)
いつもらったのか
付き合っていた頃なのか別れた後なのか
それすらも忘れてしまったけれど
A4クリアファイルに遺書と書いてあって
中身は日記やブログがコピー用紙に印刷してあった。(枚数がかなりある)
そこには
好きな音楽の事、バンドの事
学校生活や将来の悩み、私に恋をしている事が書いてあって
文才がある彼の文章は小説を読んでいるみたいだ。
読むと、あの頃の映像や感覚がありありと蘇る。キラキラしていて、熱量があって、希望で溢れていて、とても楽しく刺激的だった。
そして、私側の視点と彼側の視点が重なる瞬間がとても愛おしかった。
こんなに私を好きでいてくれる人がいたんだなぁ。
文章の中の私はとても魅力的な女の子だった。
それがいくら過去の事でも
私達の関係が完全に終わっていても
今もこんなに嬉しい気持ちになる。
それは、きっと過去に未練も執着もないからだ。
思い出は宝物。
生きていると本当に、うん
本当にいろいろな事があるけれど
嬉しかった事も悲しかった事も
生きてきたから味わえたあれこれ。
いつか必ず終わってしまうこの人生だから
この瞬間をおもいっきり感じていこう。
いつか愛おしい思い出になるのだから。